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粟生線廃線問題、解決の糸口は沿線再開発―高橋昭一議員に聞く
 阪神・淡路大震災で復興活動に従事した経験を生かし、3.11発生直後より現場の生の声を政治に反映させるため自ら岩手、宮城、福島の被災地に足を運び災害対策にあたる兵庫4区(小野市、三木市、加西市、神戸市西区、加東市、西脇市、多可郡多可町)選出の高橋昭一・衆議院議員(災害対策特別委員会委員)に阪神淡路大震災と東日本大震災の違いや、さらに地方活性化の観点から神戸電鉄粟生線廃線問題について話を聞いた。

阪神大震災は揺れ、東日本大震災は津波による被害
 5か月が過ぎましたが、蟻が崩れた蟻塚を直しているようなもので全く復旧していません。神戸市が仙台市に復興マニュアルを届け喜ばれましたが、「神戸の場合、この時点でここまでのことが進んでいたんですね」と東日本大震災では復興が大変遅れていることを改めて確認し、仙台市の関係者は落胆しました。

 阪神淡路大震災は揺れで建物が潰れたが、復興はそれを持ち上げるだけでよかった。東日本大震災では津波による被害を受けており全く性格が異なることを整理する必要があります。 「100年周期で地震が発生するので海側の再開発は行って良いのか」「マンションの10階に匹敵するような30メートルの堤防を本当に作るのか」といった問題があります。では過去に津波による大災害は発生しなかったのでしょうか。昔は地震研究が未熟であったということが想定されます。一方で、雨季に氾濫するカンボジアのトンレサップ湖の周辺の家は、浸水することを前提に建てられているように、昔は災害が起こることがあたりまえで、船の流し方や船をすぐに造り直せるなど今よりもBCP(事業継続計画)が出来ていたのだと思います。江戸時代は木造なので津波にさらわれると何も残らなかったはずで、鉄筋コンクリート造りになり汚泥や瓦礫が残るようになったのではないか。

津波は地方分権の議論の最中に発生
 復興が進まない要因として、国が県に対してどこまで強権的なものを発動出来るかを議論し、また政治主導の強力なリーダーシップの必要性を整理する地方分権の議論の最中に東日本大震災が発生してしまったことがあげられます。つまり、少なくとも国がどこまで面倒をみるのか、ここから先は地域主権でやりますといった線引きが間に合わなかった。
福島第一原発20キロ圏内にある福島県南相馬市の桜井勝延市長は “世界の南相馬にしよう”と極めて積極的に行っているが、その他の市の復興計画は情報が十分に行き届いていないため、策定が遅れている。

地方分権はまだ難しい。危機管理庁の設立が必要
 地方の首長の能力や温度差が異なる状況では地方分権は無理だ。一度強力な中央集権を推し進め、選挙制度改革、“自分たちが選んだ議員によって自分のまちが滅びる”感覚で地方議員を選出するような有権者の意識改革、政府と議会のあり方など根本的に見直さないといけない。
災害時には全てを統括する“危機管理庁”の設立を主張します。近々、議連を立ち上げる準備を行っています。

神鉄粟生線廃線問題の問題点は?
 では、神戸電鉄粟生線廃線問題ではどのような問題点が挙げられるでしょうか。存続のための活性化協議会を立ち上げ議論を行っていますが、残念ながら国からの予算で運営している以上、国が示す方向性(イベント、短期的な計画、パーク&ライドの推奨)以上の議論が行えない。だから、「しんちゃん、てつくん」の議論になってしまう。ゆるキャラでは電車に乗ってもらえない。
 
 8月に入り、神戸鉄道の原田治社長にお会いしご意見を伺ったのですが「日に日に乗員を2000人ずつ増やさないと持たないような状況で、和歌山電鐵貴志川線のネコの駅長でも無理だ」と指摘されていました。  

 電鉄の経営者はシビアに見ています。神鉄が6000系を入れたことやその財務体質をひっくるめたとしても年間12億の赤字が出ていることは間違いない。
 
沿線市町村が抜本的な沿線開発を行う必要がある
 では、どうすればよいのか。沿線の市町村が人口を20年後に1.5倍にするような沿線開発をもう一度する必要があります。沿線沿はほとんどが市街化調整区域であるが、都市計画法に基づいてもう一度沿線改革をやってみましょうということは言えないのか。そうでもしない限り、経営者が人口減少する沿線に魅力を感じないのは当たり前の話です。
 
 これは何も粟生線の沿線に限った話ではなく、全市町村にも言える話で、政令指定都市だから出来る、地方だから不可能だという話でもない。例えば、世界最大規模となる1.5MWhの大容量・高電圧リチウムイオン電池による蓄電システムなどを備えた三洋電機のグリーンエナジーパークが昨年10月に出来た加西市では、北播磨を牽引するようなスマートグリットシティ構想を創るなど壮大な計画も考えられるはずです。本気でまちの活性化に取り組むのであれば政府は予算を出すと約束しています。

「神電粟生線復活計画(仮称)」を立案するプロジェクトを開始
 活性化協議会の皆さまをはじめ、神戸電鉄の原田社長、各市長、さらには全国的に有名なクリエーターを巻き込んで沿線再開発にまで発展させ「神戸電鉄粟生線復活計画(仮称)」を立案するプロジェクトを開始しているところです。