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EVカーシェアリングのオートリブを運営するBollore (3/3)
Bollore'に聞く

 オートリブの特徴は何か?と質問すると、ずばり「One Way利用(乗り捨て)の実現だ」と返って来た。事実、「どのようにOne Wayを実現したのか?」には注目が集まっている。
 しかし、その方法は案外とアナログなものだ。
アンバサダーが溜まった車両を運転して、空いているステーションに移動させる。行き場のない車はAuto Parkに一旦集められ、1日40〜100台を、独自のルールとオペレーションに基づいて配置するのだという。つまり人海戦術だ。
 パリでは、ヴェリブ の自転車をたくさん積んで走るトラックとスタッフをよく見かける。ヴェリブと同様にオートリブもまた、車両を移動させているのだ。
 オートリブは加盟しているイル・ド・フランス内でしか使用出来ない。エリアを出ようとしているブルーカーに対しては、オペレーターが警告する。
車両の管理が出来なくなるからだ。
 One Wayを実現するためには、日本でもエリアを限定しないと、車両の管理が出来ないだろう。東京都内限定、京都市限定といった利用なら機能するのではないだろうか?

貸出場所はいくつある?
 3月16日現在、イル・ド・フランスの47地域で、会員登録が出来るEspace(“ Ki osk:キオスク” の愛称で呼ばれている)が45カ所、貸出と返却を行うSt ati on(ステーション)が300カ所設置されている。これまで全Kioskに説明員が駐在していたが、休憩場所やトイレの確保などの問題もあり、今では整頓されているか?の確認作業のために巡回している。

 使用されるEVは“Blueca(r ブルーカー)”の愛称で呼ばれており、900台が設置済み。毎週新たなステーションが開設されており、夏までに1,200のステーションと1,700台のブルーカーを設置する目標だ。1ステーションにはブルーカーが4〜6台程設置されていて、充電器はEVの数だけ設置してある。

 日本のカーシェアリングとは違い、ステーションの駐車スペースは路上に設けられている。スペースはボロレが自治体から借りており、ちょうどバスの停留所のようなイメージだ。複数のステーションを固めて設置してあり、原則500m毎に設置する目標だ。実際にはだいたい100m毎(徒歩2分以内)に設置されている。

 オンライン予約は現在出来ないが、オンラインでの会員登録が5月15日から開始予定。電話での予約は可能だ。使用料金は、駐車代、電気代、保険代込みの価格だ。

Autolib’の利用実績は?
 パリ市民の仕様状況についてColombier氏は、「パリ市民も疑心暗鬼なようで、システムがちゃんと機能するのか?様子を見ているようだ。まず、男性が使用し始めており、女性は男性が上手く使いこなすのを見て、使い始めているようだ」と語る。
 観光インフォメーションからの問合せも増えているそうだ。
「アメリカからの観光客が、メトロやバス、タクシーの代わりに、ブルーカーを乗り回すので、驚かされる」と、笑いながら話してくれた。オートリブは海外旅行者も利用可能なため、旅行客がスマートに利用している事例も多いと言う。
 また、往診に使う医者も多いだけでなく、メトロやバスよりも確実に利用できるため、ビジネスマンも使用している。
 まだまだ利用が始まったばかりで、徐々に利用者が増えている状況だが、3月16日現在、毎日800台(A to Bを1回とカウントした場合)がレンタルされ、1日の平均利用時間は4時間程度とのことだ。

EVの充電はどうやってするの?
ブルーカーの充電器等は、ボロレの子会社のIERが開発製造する。充電には、急速充電器ではなく普通充電を使用。パリの電圧は220Vで、周波数は50Hzなため、急速充電を使用しなくても、一般の電圧で運営がまかなえるようだ。
ステーションでは、貸出機器が自動的に、最も蓄電量の多い車に誘導してくれる。満充電になっていなくても、市内を走行する程度であれば、問題ない。また、走行中に充電がなくなりそうな場合は、オペレーターと通信し、近くのステーションで代わりのブルーカーと交換してもらえる。

改善はどのように?今の課題は?
 メールやFacebookで利用者の意見を収集して、1つ1つ丁寧に回答しながら対応している。現在、手をこまねいているのが、多くのユーザーがEVの乗り方を知らない事。パリを走る自動車のほとんどはMT車のため、「使い方が分からない」といった問合せが多く寄せられるそうだ。せっかくカーナビの映像によって、使用方法を説明しているにも関わらず、ほとんどの利用者がスキップしてしまう。そのため、近々HP上に、紹介ページを設ける予定だ。


Bollore’は黒字?
 ボロレ担当者は「昨年12月から開始したところで、1日の使用も800台程度。毎日のようにステーションを増やしているところで、収支バランスは明確でない」と話す。テレビ通信やKioskでの配置スタッフなど人界戦術をとっているため、黒字化していない状況だ。オートリブの運営には年間8000万ユーロのコストがかかるが、目標としているのは、年間8万人が週に2回1時間使用する稼働率だという。
 オートリブで働くスタッフ“アンバサダー”は、朝・昼・晩の3交替で、1日約400人が働いている(2012年3月16日現在)。今後1000人以上に増やす予定だが、学生アルバイトなども多いのだと言う。アンバサダーの仕事は、オペレーターとしての登録業務やユーザーの誘導、ステーションでの車両の管理・整備、キオスクの管理と案内、溜まった車両の移動など。アンバサダーへの給料は、パリ市など自治体からの雇用補助が出ているのかと思ったが、ユーザーの利用料からまかなわれている。