自動車ニュース
LIGAREセミナー 観光×充電インフラ×超小型EV
 エコカーとして期待が高い電気自動車の販売が伸び悩んでいる。ガソリン車やハイブリッド車と比べて価格が高く、充電インフラの普及が遅れていることなどがネックとなっている。
 そうした状況の中、EVのさらなる普及促進を図るため、自動車新聞社と立命館大学経営学部DML(Design Management Lab)は11月21日、LIGAREセミナーを開催した。JTB法人東京の黒岩隆之氏が「観光とモビリティの可能性」と題して講演。旅行業者としてEVをどうとらえているのか。現状と今後の展望を紹介してもらった。

社会課題の解決と観光
 まず、なぜ我々が「社会課題の解決」をテーマに、事業を通じた地域貢献に取り組んでいるかをお話ししたいと思います。
JTBグループは、今年で100周年を迎えました。100年前に一つの大きな目的を持ってつくられた会社です。当時に遡ると、日本の主要産業は生糸くらいで、外貨を獲得する術がなかったのが実態です。その中で、海外からお客様を呼び、外貨を落としてもらう手段が観光事業でした。日本の場合、観光が大きな産業だった。パナソニックの創業者である松下幸之助さんも同じような考えで、次は「観光業をやってみたい」と話していたと聞いています。
 観光業はしばらく忘れ去られていましたが、現状、国の政策の中で観光立国を目指すということで、観光庁が発足しました。我々もそれにシフトするような形で原点回帰し、交流文化産業を目指そうとしています。
 観光業が見直される理由とは、日本の場合、定住人口がどんどん減ってきています。産業も中国や韓国に押され気味で、国内市場で競争するのが非常に大変な状況になってきています。国内市場が縮小する中、観光産業に対する期待が高くなってきています。
観光庁によると、観光事業は経済波及効果が高い。人が1人動くと、それに伴う飲食、お土産、宿泊に付随するものなどへも波及します。

人口1人減少で121万円の消費減
 定住人口が1人減ると、年間の消費額が平均121万円減ると言われています。そこで定住人口の減少を交流人口で補おうという考え方です。つまり、ある場所に住んでいる人が減ったら、そこに人を連れてきて交流させるのです。
 外国人旅行者の場合は、7人で121万円の消費を担保できると言われています。国内旅行者の宿泊可能な人で22人、日帰りは77人と言われています。今後、日本が成長していくためには、国内外からの交流人口の拡大が求められています。

“人を動かす”ことが大きな課題
 今、JTBでは地域交流プロジェクトに取り組んでいます。これまでは「発地」を追いかけてきました。例えば、「東京からハワイへ人を連れて行く」とか、人を動かすところに軸足を置いていた。
ところが、それがなかなかうまくいかなくなってきています。そこで、近年では「着地発想」へと転換してきているのです。かつてはハワイや沖縄へ行くのが目的でしたが、今はハワイに行くこと自体が目的ではありません。「ハワイにある何かが好き」だとか、「ハワイで経験できる何かが好き」だとか、一つの大きな(着地の)目的に応じて人が動くようになってきています。
 我々には、「着地」である「地域の魅力をマネジメントして、様々な人に伝える」という着地と発地の連動が求められている。そのソリューションの一つとして、地域交流プロジェクトを展開しています。

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