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年頭所感―公益社団法人兵庫県バス協会 会長 上杉 雅彦

「安全はすべてに優先する」


公益社団法人兵庫県バス協会 会長 上杉 雅彦

新年あけましておめでとうございます。
皆様方におかれましては、平成27年の初春をお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。

さて、昨年のわが国経済は、アベノミクスの効果もあり景気回復へ向かっておりましたが、4月の消費税改定以降腰折れ状態になり、7−9月のGDPがマイナス1.6%となって、先行き不透明となってきました。
又、安倍内閣は昨年末に解散総選挙に打って出て、与党はそれなりの信任を得て、新年を迎えることになりました。

私どもバス業界では、昨年は円安の進行による燃料費の高騰に苦しめられましたが、秋以降、原油市場がやや安定し、下落傾向にありますが、余断は許しません。
又、乗合バス業界では昭和43年をピークに輸送人員の減少が依然として続いており、最盛期の4割迄落ち込んでおり、兵庫県内もほぼ全国平均並みに推移しております。

しかし乍ら、平成14年の規制緩和以降、最近になって乗合バス再生のチャンスとも云える法改正が続々なされ、明るさが見えてきました。
又、貸切バスも平成12年の規制緩和以降、事業者数が約3倍になり、供給過剰による価格競争激化により、各社経営が苦しくなってきております。
しかし乍ら、昨年4月の安全を重視した貸切バス新運賃制度により、貸切バス事業者にも業績回復に向け、明るさが見えてきました。
次に現在私どもバス業界が直面している課題とその対応について申し述べます。

1.交通政策基本法及びその関連法案成立とバス業界の対応について

バス業界の念願であった「交通政策基本法」が一昨年11月に成立し、12月に公布、施行されました。
又、関連する「地域公共交通活性化再生法」の一部改正が昨年5月に成立、さらに「交通政策基本法」を具体的に運用する「交通政策基本計画」が年初に閣議決定される予定であります。 
このように、「地方創生」の名のもと、乗合バス事業、とりわけ地方バスの再生に向けた国の動きが加速しております。
我々バス事業者は、これらを受けて、今後自治体主導のもとまちづくり施策と関連した交通体系作りに取り組んでいく必要があります。
現在、兵庫県内41市町中39市町で地域公共交通会議が立ち上がっており、この会議を通して積極的に進めていく必要があると考えております。
その為には私共バス事業者側からまち作りを含めた提案をしていくことが重要と考えておりますので、よろしくお願いいたします。

2.貸切バス新運賃制度への確実な移行について

昨年4月に新運賃制度に移行して9ヶ月余り経過しました。日本バス協会のアンケート調査によると、全体の約8割が「収受出来ている」「大概収受出来ている」と回答しており、今春からいよいよ本格実施に移行します。
現時点では、従来の運賃料金からかなり割高になるので、仕事量が減少する、契約輸送(従業員輸送、スクール輸送など)では割高になる為、自家用バス(白ナンバー)に切り替えるなどの話が出ておりますが、長年低落した市場価格で苦しい経営を強いられた貸切バス事業者としては、ここ一番踏ん張りどころであり、従前の状態に戻ってしまっては、貸切バス事業の収支改善は永久に出来なくなると考えております。  
お客様(旅行業者、自治体、各種団体など)に対して、ていねいに安全最優先の新運賃制度であることを説明し、理解を求め、新運賃制度への100%移行を各社責任をもって実行することが肝要と考えております。
一時的に仕事量が減少するとしても、貸切バス個有のメリットが数多くあり、中長期的にみても観光産業はインバウンドの増加を含めて、今後益々発展していくことは確実です。会員、会員外を問わず、よろしくお願い致します。

3.バス運転者不足問題と対応について

ここ数年来、バス事業者は運転者不足に悩まされております。
全国のアンケート調査によると、8割以上の事業者が不足と回答しており、各社とも再雇用制度などを活用して運転者の確保に努めております。
バス事業が運転者不足である最大の要因は、長時間労働と低所得にあります。全産業平均に対して労働時間は2割多く、年間所得は2割低い。即ち4割の乖離があり、就労したくない産業といわれており、現状では抜本的な対策を打つことは極めて困難です。
今後若者、又、女性の働く職場としていかに魅力を上げていくかにかかっております。
「言うは易く、行うは難し」のとおり、各社それぞれ、又、事業者連携を強めて人材確保を行っていく必要があると考えており、将来公共交通維持の為の国の抜本的な支援が必要になることは間違いありません。

以上3点申し上げましたが、バス事業を取り巻くリスクはこのほかにも数多くあります。運転者の健康管理問題、薬物使用問題、バスジャック対策、飲酒防止対策など、各社の対応が望まれます。

最後に一言重要な点を申し上げます。

それは、利用者のバスに対する「安全、安心」を得ることであり、全事業者が「安全はすべてに優先する」をスローガンに「運輸安全マネジメント」の実践、言い換えればPDCAサイクルにより、継続的改善を地道に続けていくことであります。

バスは国民の最後の足として、地域住民の移動手段として必要不可欠な公共交通機関であることに変わりはありません。

兵庫県バス協会としましても、会員会社のニーズに対してスピーディに対応すべく、日々努力を重ねて参り、理事会を始めとして乗合委員会、貸切委員会等を積極的に開催し、会員の為の活動を実践してまいりますので、今年一年間何卒よろしくお願いいたします。