自動車ニュース
奈良 特定地域の指定、全員が賛成
第2回奈良市域交通圏タクシー準特定地域協議会が4月23日、奈良県自動車整備振興会第1教室で開かれた。

協議会会長の藤井聡・京都大学大学院教授は冒頭の挨拶で「もし道路交通においてルールがなかったら、危なくて仕方がない。国が道路交通法を定め、そして人々が守ることで安全かつ効率よく私たちは交通手段を用いて移動することが出来る。近年わが国では何でもかんでもルールをなくすことが良いとされてきた。そうではなく相応しい自由と相応しい規制があるからこそ良い。」と述べた。

西村學・高円交通代表取締役は「協議会開催を知らせたことになっているが、未加入の事業者は連絡も何も受けていない。運輸支局はホームページを見ろと言ったが、公明正大には行われていない。ルール違反だ。」と述べ、事務局側に対して一方的に不満を述べた。これに対し、事務局は「ホームページ、プレス発表等も行っている。」と反論。また藤井氏も「法定により協議会があり、その要件は満たしていると判断している。委員の選定に瑕疵はない。次回以降参加していただく。」と淡々と訴えを退けた。事務局長および奈良運輸支局等からタクシーの現況、特定指定候補に至る経緯、利用者アンケート結果などについて説明があった。

奈良県県土マネジメント部次長の村上強志氏は「今までの活性化措置について業界はどう評価しているのか。今後サービスをどう改善し、どう客を獲得するのか。県としては、ニーズに応じた移動サービスの提供を研究しているところであり、タクシーが公共交通の一翼を担う手段として、どのようにニーズをすくい取るのか知りたい。」と述べ、業界側の取り組みを質した。

大和交通(株)の北浦健次専務は、「奈良は観光都市であり、タクシーとしてもそこに乗りたい。タクシーは小回りの聞く交通機関である。例えば足の不自由な方を移送する場合に、県に委託していただきたい。中小企業が多いので、タクシーの活用法に関する知恵や提案を行政側にもしていただきたい。」と述べた。自交総連なら・みえ合同労組執行委員長の林克己氏は「今のタクシー運転手の労働条件は劣悪である。年収は300万円程度であり、結果として業界に若手が参入してこない。労組としては今回の指定は、そうした状況に対処するための運動のひとつの成果だと捉えている。経営側、労働側、様々な団体が要求したからこそ法律として通過したということを慎重に見ていただきたい。」と述べた。これに対し北浦氏(大和交通)は「特定指定地域に入ったほうが良いが恒久的な減車ではなくできれば『預り減車』でやりたい。」と述べた。また服部タクシーの服部圭蔵社長も賛成の立場で発言した。

採決を前にして藤井会長は「1台あたりの収入が増えたのは、平成21年から右肩上がりとなっているグラフが見えるが、総需要が増えたから(収入が)増えたのではないというのが肝である。ではなぜ増えたのか。車両数が平成21年をピークに408台から366台まで奈良市域で減少している。こうなると単純な割り算で、分母のほうが少なくなると、分数のほうは当然大きくなる。分子のほうが小さくなってきても、それを上回る速度で分母のほうすなわち台数のほうが少なくなる。これは一般に減車と呼ばれるが、減車をするということで、一台あたりの輸送回数や実車キロが増えてきている。にもかかわらず、賃金のほうは改善の兆しは有るが改善はしていない。ということを考えるとこれは、減車をしていなければより激しく収入が減っていたと。このことはこのデータから明々白々な事実であります。一方で需要のほうの増加に関しては、経済学の理論を持ち出すまでもなく、需要の弾力性という言葉があるが、タクシーに関してはタクシーの需要の特殊性というものが何十年も繰り返し議論されてきた。通常の市場の財・サービスよりも様々なものに対する感度が低い。要するにタクシーに乗るけれども乗らない人は乗らないという事情がある。様々な努力に対する弾力性が低い。しかし弾力性はゼロではない。必ずこの努力を怠るということはあってはならないわけであって、続けなければならない。ただし能力も無限ではないから、タクシー業界が弾力性の低さを引き受けないといけないのは理性的な判断上認識しなければならない。そういうことを考えると供給過剰という問題と需要の掘り起こしというこの二つの課題が奈良市域においては課題である。このことを先ほどの説明などから認識した。この認識に基づいて特定指定地域に指定を受けることで適正化と活性化を進めることによりタクシーが地域公共交通としての機能を充分に発揮することが必要と考える。更に活性化ということで付言すると、タクシー業界だけが地域社会あるいは他のモードと無関係に努力をすることで掘り起こすことができる。他モード、他地域地方自治体の皆様と交通街づくりという視点も含めて協働を図ることでより適正な活性化が図れる。よって私は奈良市域交通圏が特定意指定地域に指定されることに個人として、会長として賛成する。」と発言し、特定指定地域に同意した。

このような議論の後、協議会において投票が行われ、県・市・労組・利用者・警察、労働局と会長・事業者の全員が、奈良市域交通圏タクシー特定地域の指定にで合意とした。