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日本バス協会 第88回定時会員総会
 日本バス協会(高橋幹会長)は 6 月16 日、経団連会館で第 88 回定時会員総会を開催し、平成 26 年度事業報告及び同 26 年度会計報告諸表、役員退職慰労金の支給について審議、原案通り承認した。また平成 27 年度事業計画及び収支予算について報告がされた。任期満了に伴う理事及び監事の選任は、高橋幹会長が退任し、後任として上杉雅彦副会長(神姫バス)が会長に就任した。なお87 名の理事が選任され、うち長尾真(神姫バス)、澤史郎(日本交通)の両氏をはじめとする 15 名が新任理事となった。総会後に開かれた新理事による臨時理事会では、正副会長、理事長、常務理事の選任、顧問、参与の任命、各委員会委員長の任命が審議され、12 名の副会長のうち新任は清水一郎 ( 愛媛県バス協会会長 )、飯塚哲(川崎市交通局局長)の両氏、他は再任となった。理事長には梶原景博氏、常務理事には船戸裕司氏、中嶋邦夫氏(新)の両氏が選任された。また顧問には堀内光一郎氏(富士急行株式会社)、高橋幹氏(神奈川中央交通株式会社)が就任。
 
 地域公共交通ネットワークの維持、改善の取り組みやバス事業の安全確保とサービス向上の取り組み、バス利用促進のための輸送環境改善対策などの政策要望と、運輸安全マネジメントの推進や過労運転の防止、ゆとり運転、シートベルト着用、飲酒運転の根絶の徹底などの安全輸送の両決議を満場一致で採択した。
 
 高橋会長は冒頭挨拶で、「長年の懸案だった高速貸切バスは新高速乗合バスに移行された。また、昨年 4 月には貸切バスの新運賃・料金制度もスタート、まだまだ課題は残っておりますけれども、大きく前進をしたものと考えております。交通政策基本法も一昨年の 11 月に成立、交通政策基本計画も今年の 2 月に閣議決定をされました。これからも安心・安全なバスサービスを提供していただきたいと思います。上杉新会長はバスに関する経験・知識共に豊富な方であります。日本バス協会の新しいリーダーとして大変すばらしい方であると認識しております。これまで本当にありがとうございました」と退任のあいさつと、上杉新会長への期待を込めた。

 臨時理事会で新会長への就任が決定した上杉氏は挨拶で「長年の経験を活かしてバス業界の発展のために尽力してまいりたいと考えております。乗合バスの方では長年の少子高齢化が進行し、特に地方において厳しい経営が続いております。貸切の方も平成 12 年の規制緩和のために競争激化となり、厳しさが非常に増している。しかしながら、ここ 2、3 年の間は我々にとって『福音』とも言うべき法改正が続いております。平成 25 年末に我々にとって念願の交通政策基本法が成立し、翌年には公共交通活性化再生法、さらに本年 2 月に交通政策基本計画これが閣議決定され、乗合バス再生の目処が立ってきたと思っています。加えて地方創生が動き出しております。地域公共交通の有料化、これは必ず見直される時期が来ると私は思っております。事業者の皆様には率先して地域の自治体に働きかけをお願いしたいと思います。一方で、バスを公共交通として維持していくために、補助金・税制優遇は不可欠であります。関係省庁、国会議員の先生に対して必要な財源を得られるよう努力を続けてまいります。また、平成 24 年の関越自動車道でのツアーバスの重大事故を受けて、高速貸切バスの安全・安心回復プランが策定されました。この中に貸切バスの料金体系を抜本的に見直すと明記され、これを受け 4 月から我々念願の貸切バスの新運賃・料金制度がスタートしました。運賃水準も徐々に上がってきております。貸切バス事業者が長年苦しんできた赤字からの脱却と収支改善、これも目処が立ちつつあると思っております。この他にも、要員不足の問題、新高速バスの規制の見直し、貸切バスの参入規制の強化など、数々の課題が山積しております。引き続き皆様からのご意見を丁寧にお伺いしながら、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。高橋前会長様、本当にご苦労様でした。振り返ってみますと、バス業界が大きく変わろうとしているとき、いろんな問題を抱える中で将来展望を切り開いていただきました。我々はこれをしっかりと定着させて、前に進めてまいりたいと思います。新体制の理事の皆様方に一言だけ申し上げたいと思います。皆様はそれぞれの企業の経営トップであります。私は常々、経営トップとはゴールのない駅伝の区間ランナーと表現しております。企業は前のランナーからたすきを受け取って、全力疾走をして、より良い成績を出して次のランナーにたすきを渡す。これが一番、大切なことであると私自身は思っております。今回の日本バス協会会長としてこのことを肝に銘じて努めて参りますので、皆様方のご支援、ご教授のほどよろしくお願いします」と述べた。
  
 来賓祝辞で太田昭宏国土交通大臣は「二つ大きな動きがございました。一つ目は交通基本政策で、街づくりと連動したバスをはじめとする交通網の整備ということや、あるいはオリンピック・パラリンピックと言うものを前にしてバリアフリーなどを私たちがしっかり整えなければならないということが第一です。二つ目は地域公共交通活性化再生法で、BRT であるとか、あるいはバス路線網の再編ということに力を入れるという法律です。どのように地域を活性化するのかということの中での、皆様の応援をさせていただくことになりました。地域の交通の中でバス交通が極めて大事であると認識しておりますので、しっかりと応援させて頂きます」と述べた。

 上杉新会長は多数の国会両院議員ら来賓祝辞に謝辞を述べて「最近、特に私が強く関心を持っておりますのが地方創生でございます。その中で、地域公共交通の維持確保、観光振興は欠かせない重要テーマでございます。私どもは広域連携と言うことで強みを持っております。我々自身が強みを持っているバス事業者ということで、積極的に今度の地方創生に関与してまいりたいと思います。会員の皆様にもこれを強くお願いします。我々の根幹にあるのは安心・安全であります。安心・安全をきちっと確保する。その上に事業が成り立っているということを肝に銘じて事業者一同頑張ってまいりますので、ご支援・ご指導のほどよろしくお願いします。会員の皆様に申し上げます。私自身はバス事業には二つの事業性格を持っていると思っています。「不易流行」と申しますが、変えてはならないものは運輸事業としてのバス事業です。この根幹は先ほど申し上げました安心・安全。これが全てであります。そして変えなくてはならないものは、サービス事業としてのバス事業であります。お客様のニーズを先取りして的確に答えていかなければ、未来のバス事業はありません。今一度原点に返ってバス事業発展に向けて力を合わせて参りましょう」と力強く呼びかけた。