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貸切バス事業者運行管理・労務管理緊急講習会を開催
国土交通省近畿運輸局大阪運輸支局と厚生労働局大阪労働局は3月7日、貸切バス事業者運行管理・労務管理緊急講習会を開催した。今回の講習会は、今年1月15日に長野県・軽井沢の国道18号線で起きたスキーバス事故の重大性を受けて、両局が急遽開催したものである。

開会の前に、スキーバス事故犠牲者に対して、参加者全員で黙祷を捧げた。

開会にあたり、滝口敬介・大阪運輸支局長が挨拶。「先日の事故の調査では、運転手の乗務経験が浅かったこと・事業者による運転者への教育が不十分であったことが供述から明らかになっている。さらに、シートベルトをしていなかったことも明らかになっている。乗客の安全を貫く姿勢があったならば、救うことのできた命もあったのかもしれないと考えると、誠に残念である。大阪運輸支局では、今回の事故を受けて、緊急に立ち入り監査・バス出発時の街頭監査をしている。管理が出来ている事業者は見られるが、そうでない、基本的なことが出来ていない事業者もいくつか見られた。輸送の安全確保は事業者の最大の使命である。こうした事故が頻発することで、運送事業者全体が社会からの信頼を失う。利用者からの信頼を得るために、今回の講習会開催の運びとなった。ぜひもう一度安全意識をかみ締めていただきたい」と、事業者らに対して安全への取り組みを改めて促した。

大阪労働局からは、前村充・労働基準部監督課長、森美大・同部監督課特別司法監督官、明河一彦・同部安全課安全専門官、吉川雅美・同部健康課衛生専門官の4名が講演。前村氏は「バス事業者に対する監督指導結果から見た問題点」について講演。労働基準法・改善基準告示の概要を説明しつつ、平成24年から同27年に至る4年間のバス業に対する監督指導結果を基に、バス事業者の法令順守に関する問題点を指摘した。指導結果から、労働時間(1日8時間、1週40時間)・総拘束時間(4週を平均した1週間当たりの拘束時間は原則65時間)・最大拘束時間(1日13時間以内を基本、延長する場合であっても16時間が限度)の労働時間関連の三つの項目で、違反事業場の割合が特に高いことが示された。

この他に森氏は「バス運転者の労働時間等の改善基準等」、明河氏が「交通労働災害防止ガイドライン」、吉川氏が「健康診断と過重労働対策」についてそれぞれ講演を行った。

大阪運輸支局からは、米田一彦・首席運輸企画専門官、林洋亨・運輸企画専門官、中村洋一・運輸企画専門官の3名が講演。米田氏は「貸切バスの安全確保の徹底」について講演。バスの街頭監査の実施状況について説明した後、「バス・ドライバーの皆さんが、『シートベルトをするように』と一声かけただけで、救うことの出来た命があったかもしれない。そのことを考えると、軽井沢の事故が起きた後であるにもかかわらず、指導しなければならない事業者がまだあったことは、とても残念である。今回の軽井沢の事故で取消しを受けた事業者は、事故を起こしたから取消しを受けたのではなく、日ごろの基本的な点検作業や、法令順守を怠ったからこその取消しである。今一度そのことについてご理解いただきたい」と、時折語気を強めながら、バス事業者に対して安心・安全について自覚を促した。

これ以外にも、林氏が「貸切バスのシートベルトの着用徹底」、中村氏が「運転者に対する運転技術の指導の徹底」について講演した。

閉会にあたり、前村氏が挨拶。「労働局としては二つの側面から取組みを続けていく。一つ目は法令・ガイドラインの周知徹底、二つ目は改善点の検査と勧告である。バス事業者は、従業員の安全と乗客の安全を両立させなければならない。今後ともバス業界の皆さまと、安全・安心に向けた取組みを継続していく」と決意を述べ、講習会を締めくくった。