自動車ニュース
年頭所感─一般社団法人 兵庫県タクシー協会 会長 吉川紀興
新年あけましておめでとうございます。

平成29年の年頭にあたり謹んでご挨拶を申し上げます。

さて、タクシー事業につきましては、ここ30年、輸送需要の減少傾向が続き、タクシー車両の供給過剰と恒常的な乗務員不足、乗務員の労働条件の悪化など依然として危機的な状況におかれています。このため、平成26年1月に改正タクシー特措法が施行され、一昨年は神戸市域交通圏の特定地域の指定が行われました。昨年2月に特定地域協議会並びに準特定地域協議会を開催しましたが、未だ地域計画を策定するに至っていません。本年は、適正化分科会及び活性化分科会を早期に開催し議論を深めるとともに、特定地域協議会、準特定地域協議会を開催しタクシー事業の活性化・適正化の取組をより一層進めて参りたいと考えています。

また、一昨年、養父市における国家戦略特別区域会議において、「自家用車ライドシェア」の拡大の提案が行われましたが、タクシー業界挙げての署名活動を含む反対運動、各方面のご理解とご協力を賜り、現在のところ(自家用車有償運送)の域内に落ち着いているかの様子を見せています。しかし、新経済連盟は、「シェアリングエコノミーの成長を促す法的環境整備」という名目の下、インターネットを利用した白タク行為を合法化すべく、道路運送法の改正について、政府の規制改革会議、国家戦略特区諮問会議、IT総合戦略本部等に対し繰り返し要望・提案を行っています。

これら提案については、輸送の安全確保、利用者保護と利用者の利便向上等の観点から、タクシー事業の根幹に関わる問題として、タクシー業界が一致団結し地方公共団体、労働組合、個人タクシー業界、バス業界とも連携し全力で阻止していく所存です。また、タクシー業界として地域交通の確保・拡充において何が出来るかを真摯に考え、行動に移していく努力を重ねて参ります。
また訪日外国人旅行者に対する対応については、初乗り距離短縮運賃の検討をはじめ、観光ルート別運賃、定額運賃の設定等、外国人旅行者のニーズに対応した取組を行うなど、タクシーの利便性とサービスの向上を目指して取組を進めて参ります。

当協会は、タクシー事業を取り巻く大きな状況の変化の中で、会員の皆様とともに、「ドア・ツー・ドア」等、タクシーの特性を活かした地域の公共交通機関としての役割を発揮し、タクシー事業の適正化・活性化の実現に向けて全力を挙げて取り組んで参ります。

次に、本年取り組むべき課題ごとに述べさせていただきます。

輸送の安全確保については、道路交通法の遵守と多発する事故の防止、特にスピード違反や飲酒運転の防止に関して、乗務員に対する指導と運行管理の徹底を行うとともに、経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制の構築のために、運輸安全マネジメントの取り組みを更に推進するとともに、法令遵守を基本においた事業経営になお一層努めて参ります。また、乗務員の労働条件を取り巻く環境が一段と厳しくなっていることから、労働基準法等を遵守してのタクシー事業経営に努めてまいります。

次に、タクシー運賃改定についてですが、運賃改定への取組みはタクシー活性化方策の一環ですが、一昨年来、初乗距離短縮による運賃組替え方式によるシミュレーションを実施してきましたが、神戸阪神間地区は他地区に比べて一回当たりの実車キロが短く減収率が大きいことが判明したため、運賃組替え方式によらない初乗距離短縮を含めた運賃改定の検討を行って参ります。

次に、現在各地域で導入されているコミュニティバス、市町村バス、NPO等による有償運送、また自動車運転代行業についてですが、タクシー利用者が年々減少する状況のもとで、タクシー事業者にとって深刻な問題となっています。特に、自動車運転代行業者による白タク類似行為に対しては喫緊の取組課題と考えています。

各会員の皆様におかれましては、地方公共団体、事業者、住民、地方運輸局等で構成される地域公共交通会議等に積極的に参加し、地域住民の生活交通確保のための協議において、公共交通機関としてのタクシーの役割に関して、地域住民・自治体のご理解が頂けるように、また、公共交通空白地域での交通確保のため乗合いタクシー等の提案を積極的に行っていく必要があります。

次に、タクシー乗務員のお客さまサービスと接客マナーの向上の取り組みについては、タクシー事業が「安全・安心」をモットーとする旅客サービス業であることを自覚して取り組み、平成19年から毎年「タクシー乗務員接客コンテスト」を実施し社会的に大きな評価を受けているところですが、本年におきましても本コンテストを実施し、兵庫県におけるタクシー乗務員のお客さまサービス・接客マナー向上の大きな力になるように、さらに取り組みを強めてまいります。特に、近距離のお客さまに対する対応については、タクシーの公共交通機関としての使命の自覚とタクシー需要の掘り起こしの取り組みであることを自覚し、今後とも、お客さまからの様々なご意見・要望に耳を傾けて取り組んで参ります。特に、お客さまが利用し易いタクシーを目指して、お客さまが乗り易い運賃のあり方についても、お客様の意見・要望をお聴きして取り組んで参ります。

また、当協会は、タクシーが地域の交通機関として、あらゆるお客さまのニーズに応えるために、健常者のみならず高齢者や障がい者の皆様の特性を理解し円滑なコミュニケーションを確保するために、平成24年から「ユニバーサルドライバー研修」を実施していますが、本年におきましても、研修内容の見直し、充実を図るとともに兵庫県下全地域において実施して参ります。

次に、年々輸送需要が減少する状況の中で、お客さまの様々なニーズに対応するための取り組みが重要になっていますが、引き続き兵庫県下それぞれの地域において地域の皆様の声をお聴きして各支部とともに事業活動の展開を行ってまいりたいと考えております。

最後に、会員各位の益々のご健勝と事業のご発展をご祈念申し上げますとともに、関係各位の深いご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げまして、年頭にあたってのご挨拶と致します。