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年頭所感─兵庫県タクシー事業協同組合 理事長 枝松七郎
年頭に当たり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

平素は、幣組合の事業につき、格別のご高配を賜り、重ねて御礼申し上げます。
さて、昨年は将棋界で中学生棋士・藤井聡太四段の29連勝に日本中が湧き上がりました。

しかし、囲碁や将棋の世界では、AI(人口知能)がすでにトップ・プロを打ち負かす時代になっています。

AI研究で知られるオックスフォード大学のオズボーン准教授は「今後、20年以内にAIに代替される720職種」という論文を発表し、「タクシードライバーは、720職種のうち、171番目にAIにより仕事がなくなる可能性が高い」と論じています。

また、日本政府は東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までにタクシーの自動運転の実現を目指しています。スマートフォンで指定した場所に自動運転車を呼び出す社会が現実になれば「タクシードライバーは不用になる!」と我が業界に戦慄が走りました。

こうしたAIや自動運転を促進する背景には、少子高齢化に伴う人口減少、労働力人口の減少の進展があります。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、我が国の人口は、2014年の1憶2708万人から、2060年には8674万人へと実に32%も減少します。

有名シンクタンクの予測では、生産年齢人口(15〜64歳)は、1995年の8726万人をピークに、2014年には7785万人となり、その後、さらに少子高齢化と人口減少が進展することから、2025年には7000万人に減少、何と30年間で1700万人以上減少します。

特に2025年には団塊の世代がすべて75歳を超える後期高齢者となり、日本はかつて経験したことがない超高齢社会という未知の領域に突入します。
このため、政府が政策的にAIや自動運転車の導入を進めることは必然の流れです。

しかし、私はそれでもタクシードライバーはなくならないと思います。それはタクシーに求められるものが「運ぶ+α」へと変容を遂げるからです。αの部分は「おもてなし」や「快適なサービスの提供」です。例えば車いすの方でもドア・ツゥ・ドアで利用できる高齢者向けサービスニーズは進化し、大きく増加します。また、政府の女性の活躍推進や働き方改革により、女性ドライバーによる細やかな気配りに対するニーズも増大します。

2015年にある通信会社が行ったアンケートでは、タクシーに求めることは 1.運転手の態度のよさ、2.運転手の道の詳しさ、3.車内の清潔さ―の順となっています。現状でも「態度・マナー」「その地域に関する知識」「クリーンさ」という「運ぶ」という基本的サービス以外の付加価値(α)が重視されていることが分かります。こうした顧客のニーズを心にとめて心の通うタクシーを目指さなければなりません。

最後に2017年の外国人観光客は2800万人を超えることが予想されています。このうち、兵庫県や神戸市を訪れる人は6〜7%に当たる170〜190万人です。今後とも港町神戸の夜景や神戸ビーフをお得に楽しめるタクシー、灘五郷酒蔵巡りタクシーなど、地域のニーズを掘り起こし、外国人観光客の増大に対応して参ります。
今年も役職員一同、鋭意努力して参りますので、引き続き皆様方の温かいご支援を賜りますようお願い申し上げ、新年のご挨拶といたします。