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後部座席のシートベルト義務化―記者のひとこと
 時速5キロで衝撃を体感するシートベルトコンビンサー。予想外の衝撃に取材した記者は驚いた。9月26日に、兵庫県警明石警察署が実施したシルバー交通安全教室に取材に赴いた際での実体験。JAFの方に話を伺うと時速60キロでシートベルトを着用していない場合は肋骨が折れるくらいの衝撃を受けるのだと言う。

 平成19年6月に公付された改正道路交通法で、後部座席のシートベルト着用が義務付けられたが、タクシーやバスなどに乗車した際に流れる車内アナウンスは「ご協力をお願いします」に留まるなど協力を促すのみに終わることもある。罰則も高速道路上で違反した場合に運転手に行政処分として1点の違反点数が科されるのみだ。

 警察庁によると、後部座席のシートベルト非着用の場合に生じるケース(車外へ投げ出され死亡する)についてもシートベルトを着用した場合は危険性を2分の1に抑えられるという。後部中央席の2点式ベルトを着用した場合、衝突した際にベルトが腹部に食い込み、内臓を損傷する事例もあり、シートベルトの必要性を疑問視する声もあるが、内臓を損傷するようなケースの場合、シートベルト非着用時の危険性が更に増大することは容易に推測できる。

 国内では電気自動車やハイブリッド車の開発、環境効率や経済性ばかりが話題にあがるが、自動車を運転する際の後部座席シートベルト非着用の危険性についての認知度はまだまだ低い。欧米の場合、1980〜90年代にかけて後部座席のシートベルト着用が義務化がされた影響で、メーカーが全席3点式ベルトを採用しているケースも多い。

 欧米諸国では後部座席シートベルト義務化への罰則強化が進められた結果、ベルト着用率が上昇し、自動車メーカーも3点式ベルトを導入せざる得なくなったという経緯があるそうだ。国内自動車メーカーにとって、2点式ベルトよりも製造費用のかかる3点式ベルトを採用することは、利点は少ないのかもしれない。だが、人の命に関わる安全意識を軽視することがあってはならない。例え、環境性や経済性の面で最先端を歩んでいようとも人の命に関わる安全意識が欠如しているようでは、自動車先進国とは到底、言えないのではないか。

 早く快適にエコで走ることにただ、注目するのではなく、トラブルが発生した際に被害を最小限に防ぐ手だてを予め確認しておくことが必要だ。効率・経済・環境性に目を奪われ、安全や命を二の次にする風潮が今の日本社会にある気がする。車は便利な箱物だが、人はモノではない。