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合意形成が重要―三日月大造前国土交通副大臣
 政府・与党は交通運輸行政の憲法となる交通基本法の制定を目指し、検討を進めている。今後、地域の公共交通はどうなるのかを三日月大造衆院議員(前国土交通副大臣)に聞いた。

 菅直人首相は地方へ交付するひもつき補助金を一括交付する方針を打ち出したが。
 ―「国で使途を定め、地方の行政を縛ってしまう交付金や補助金の在り方から、地方の裁量で住民の合意により使い道が決められるという、真の地方自治・住民自治というのを目指すべきだ。菅総理や鳩山前総理、民主党が掲げている交付金、補助金改革は進めていかなければならないと思う。ただ、一足飛びにするのか、全部するのかということについては経過措置なり、内容の見極めが必要だと考えている。交通基本法に関わる地域の公共交通活性化に関わる交付金の取扱いについては地方の方々にも意見を聴きながら進めていく」
 
 地方に補助金を一方的に交付されても制度や人材が不足しているという声も聞こえるが。
 ―「地域の自治体と交通を運行している事業者と利用者たる住民がよく話し合いを進めて頂き、一定の合意形成ができた場合は国としても一定の支援が必要ではないかと考えている。今回、新たに地域公共交通サバイバル事業の中で予算を大幅に拡充し、要求している。今後、財務省の折衝や政策コンテストの中で広く多くの皆様方の理解を得て、優先順位付けはされるだろうが、頑張って勝ち残ってもらいたいと思っている」
 
 地域公共交通交通確保維持改善事業(生活交通サバイバル戦略)で初年度の財政支援は非人口集中地区に限定するという声も出ているが。
 ―「限られた予算の中で 都市部と地方のどちらを優先するかを国民に問いかけている。他に交通手段がなく、赤字を前提に運営、運行を余儀なくされている地域・地方を中心に支援することが求められているのでないかと考え、制度設計を進めている。将来も都市部だから支援しないという訳ではない。地方、山間部、離島部を優先的に支援することを想定しているだけでまだ、確定している訳ではない」
 
 移動権をどこまで保障するかという声もある。
 ―「どこにいても、どんな状態にいても広い意味で移動する権利。違うことばで言えば交通権だと私は解釈している。権利を保障しようと思えば、義務があり履行しようとすれば、費用がかかる。どこの誰がどのような権利を。どこの誰がどうやって保障するのか。ある程度、想定する必要がある」

 国民の中には交通基本法に対する理解が十分に深まっていない気がするが。
 ―「交通に関する基本法だから極めて重要。与党・国会や省内だけではなく、広く多くの方々に知ってもらう努力が必要だと思う。高齢化が進み、温暖化対策が求められる中で、交通に関わる課題は目に見えないところ、大きな声にならないところで進展している。移動手段がなくなり、交通手段に制約が出ることが予想されるなかで、将来的には新たな介護・医療・福祉費用の増大をはらんでいると考えている。そういうものを交通事業者だけではなく、介護事業者、その他の行政機関を含めてカバーしていくことにより、移動が担保されれば生活の豊かさ、経済活動も進展する」
 
 交通基本法の制定に向けて告知の方法も色々とあると思うが。
 ―「シンポジウム、タウンミーティング、事業者を集めた説明会の他、DVDなどを活用しながら交通基本法に関する理解促進を図っていく」
 
 事業者のモラルハザードも心配だ。
 ―「事業者のモラルハザードを助長するようなことがあってはならないと思う。厳しい経営環境は分かるが、古い車両で排気ガスを住民にまき散らすようなサービスの悪い状態で補助金を貰って、維持しようかということだと利用者や住民の賛同や理解を得られない」
 
 今後の交通行政や公共交通に対する期待は。
 ―「交通行政・交通公共機関の好循環を作っていけるよう期待している。行政でも交通部署のウエィトがまだまだ、低く小さいので、しっかりと整備していけるように。補助金、交付金についても平等に配分するのではなく、しっかりとした合意形成、行政措置を取ってもらえる所に国が応援ができる体制が取れればと考えている。一方で大きな流れでは、地方に使途をしばらない交付金・補助金という側面もあるので、同時並行で進めていく必要があると思う」