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運送業界の企業気質の問題点を探る―摂南大学羽石研究室
 10月25日号からトラック運送業界の実態調査を学生とともに運送業界の調査行う摂南大学の取組みを紹介している。今回は羽石研究室が行う「ドライバーの意識調査」を取り上げる。
 
 国内貨物総輸送量の90%をトラック輸送が占める。しかし日本社会におけるトラック輸送の役割についての認識はあまりに低い。
 
 来春大学卒業予定者の10月1日現在の就職内定率が過去最低の57・6%と落ち込んだ。就職氷河期と呼ばれた平成15年10月時点でも内定率60%程度であった。それを上回る結果となった。
 
 しかし、このような中でも新卒就職希望者は中小の運送事業者を選ばない。また志願者は他に就職先が見つからないからという動機で志望するのだという。
 
 運送業界への志望者が少ない理由として挙げられることは、収入・就労形態・福利厚生が„不安定“で、魅力を感じにくいという社会的印象があるからだ。経営者らはその問題点をしっかりと認識しながらも改善できていないのが現状だ。
 
 摂南大学羽石研究室は「ドライバーの意識調査」と題して、現段階で従業員はどれほど仕事や組織に満足しているのか調査を行っている。運送事業従事者への教育、プロドライバー資格の法制度化、さらには若い労働力の確保につなげることが目的だ。 
 
 組織の診断方法として1.組織風土(組織文化、企業文化、心理文化)2.個人属性(行動規範、価値観)3.独自に編み出した従業員の意識調査(モラール・サーベイ)という方法を用いて総合評価を行い、問題点の把握と今後の課題・改善点ついてまとめる。
 
 この調査は3年計画で取り組んでおり、今年は2年目に当たる。昨年度は4社
(従業員数470名、250名、13名、17名の4社)を対象に調査を実施した。1.組織風土とは就業態度や職場の雰囲気を示し、従業員の職場の雰囲気に対す
る意識について考察。2.個人属性とは個々人の行動規範や価値観を示し、従業員の目的志向と達成意識について考察。3.従業員の労働意欲調査
とは、従業員の労働意欲や仕事と会社に対する意識を調査するもので、従業員の仕事に対する考え方について考察。
 
 その結果、個人属性では「人生は運任せである」という思考が強く、将来に夢を抱き、切り開いていこうという意欲が弱い。組織風土ではやるべき仕事が上司から詳細に説明されず、注意や指導においても詳細がないという不満を抱いている。その理由としてミーティングが仕事に生かされていないことが挙げられた。
 
 また、労働意欲調査では、上司から自分の努力が評価されていないのではないかという不安を抱き、同業他社と比較し、給与や福利厚生に対して不満を持っているという点が浮き彫りとなった。 
 
 これらの問題点を早急に改善するために、ドライバーに将来に向けての目標設定を行えるような環境を作ること。ドライバーに明確な注意と指導を出すことを徹底する。ミーティングを活かし、やるべき仕事の内容について十分に説明を行う。

 また人事評価制度、福利厚生、運賃制度を見直すことが必要だ。さらにそのように環境を整えるためには適正な運賃を収受することが重要であるという結論に至っている。
 
 研究を開始し2年目となる今回は調査協力会社を奈良、和歌山、大阪、京都の約23社に増やし、会社の規模別で比較する。調査はアンケート形式で行い意識に関する設問が70問、また生活に関する29問を追加し99問を用意した。
12月に報告書をまとめる予定だ。