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隠れた被害者 潜む中皮腫―神戸港
 1960年代から80年代にかけて、全国のアスベスト(石綿)の3割を輸入していた神戸港。20年後の平成19年2月5日、三井倉庫で働いていた父親中本有年さんを中皮腫で亡くした中本文明さん。
 
 中本さんは有年さんが死亡したのは三井倉庫側がアスベスト(石綿)対策を怠った為とし、遺族2人が損害賠償を求める訴訟を起こした。今年の2月25日、大阪高裁で開かれた控訴審判決。永井ユタカ裁判長は約3600万円の賠償額支払いを命じた。
 
 亡くなった有年さんは昭和26年から52年までの約27年間、三井倉庫神戸支店で勤務し、石綿鉱石を含む貨物をトラクターで運搬していた。石綿の積み込み時や、倉庫内での運搬をする際、破袋から石綿が飛散しているが常だったという。
 
 中本さんは「中皮腫は肺がんと同じように見られることもあるが違う。中皮腫は苦しみながら、目をむきながら亡くなっていく」ととつとつと語る。

 「隠れたアスベストの被害者がいるはず。中小企業で勤務し、転職を繰り返すうちにアスベストを吸いこみ数十年後、例えば、自動車整備業の関係者でバスやトラック、ブレーキペダルを整備していた人や、鉄道整備の関係。アスベストは発症した際に、どこで石綿を吸ったかも分からず、被害の掘り起こしのできない可能性もある」、「企業は責任を負おうとしないが、危険は到るところにある。働く側が安心して、働くことのできる環境造りをして欲しい」と訴える。
 
 裁判で、遺族側は企業の安全配慮義務違反を訴え、三井倉庫側は「危険性を予見できたのは81年以降」と主張し、高裁判決後に上告している(続く)。