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ゼロスポーツの倒産 メーカーと売買契約を締結出来ず
 電気自動車(EV)の開発で定評のあった「ゼロスポーツ」(岐阜県各務原市)は3月1日、事業を停止し、7日に自己破産申請を行った。負債額は約11 億7700万円。

 同社は7日に破産の申し立てを行い、事後処理は破産管財人に委ねた。10年8月期の年間売上高は約5億5300万円、経常損失は2億1500万円の赤字だった。

 ゼロスポーツは1994年に設立されたベンチャー企業で、EV車の開発に長年取り組んでいた。2005年「愛・地球博」の際にはイベント用パレードカー(軽トラックEV)に採用されるなどし、知名度を向上させたが、不況による影響を受け、10年8月期は欠損を計上していた。

  昨年、8月に同社は日本郵便とEV車1030台を納入する契約(契約金額約35億円)を結んでいたが、納入期限までにEV車を納入できなくなった。EVの生産遅れから予定通りに納入が出来ず、今年の1月に日本郵便から契約不履行を理由に契約を解除された。違約金は約7億円。

 一方、日本郵便は2日、ゼロスポーツの破産申請に関連し、ゼロスポーツから納入予定だった電気自動車の仕様について「日本郵便から仕様の変更を要請した事実はない」と発表した。

 これはゼロスポーツが、日本郵便から仕様の変更を要請され納期が遅れたという主旨の説明について事実と異なると反論したもの。

 日本郵便は、ゼロスポーツから「10月20日に契約の仕様で定められたベース車両で納入出来なくなったと報告を受け、その際、他社のボディで納入するとの提案があった」「他社のボディにすることは、新たな開発プロセスで別の車種として開発し、型式認定も新たに取得することになるものであり、全く別の契約であり契約変更というものではない。また、納入期限や品質についても何の保証もないため、リスクが大きいと判断したため」と説明した。

 また、日本郵便はゼロスポーツから仕様で定められた改造車両での納入ができないという主旨の文書を12月10日付けで提出があったこと、ゼロスポーツに対し1月14日に契約解除を口頭で通知し、1月17日付で文書を送付したこと、違約金についても契約不履行として約6億9千万円を請求していることなどを明らかにした。

 日本郵便によるとスバルからゼロスポーツにEV納入の契約日の8月6日より以前の5月20日に販売は確約出来ないと通告があったことが9月24日に判明。そこで日本郵便からスバルに再度ゼロスポーツへの販売を依頼したが10月13日にスバルがゼロスポーツへ販売しないことが判明した。

 さらに、日本郵便が契約の仕様にスバル「サンバー」の改造電気自動車とした背景について、「当時、商用車で使用できる軽四の電気自動車はゼロスポーツで改造したこの車両しか存在せず、通常の手続に従って官報公示を行った上、随意契約に付した」としている。 一方、ベース車両の供給元のスバルの広報は「ゼロスポーツと売買契約を締結していない。改造後の安全性の保証などで合意できなかった」と話し、また、ダイハツの広報も「ベース車両に使用したいという要望は認識していたが、ゼロスポーツとの売買契約は結んでいない」と述べいずれのメーカーともベース車両の売買契約を締結していないことが明らかになった。

 日本郵便は今後の電気自動車の導入について、「2〜3台程度の導入が継続していくが、1030台導入のプロジェクトは今後どうするのか検討している」と話した。

 コンバートEVを販売する上で「自動車メーカーとの安全性に関する保証をどうするのか」この問題をどう乗り越えていくのかが鍵になりそうだ。その次には保険会社との責任範囲の問題など、乗り越えなければならない山はまだまだ、これからのようだ。