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記者のひとこと―「節電」
 「東日本大震災の被災地東北地方や東京電力の管内では電力不足による計画停電も場合によっては実施される」報道各社の報道を新聞で目にするたび、「大変な」と西日本(兵庫県神戸市)で生活するわたしはふと、他人事のようにつぶやいた。

 鉄道の一部減便など、震災の影響は遠く離れた西日本でもわずかながら発生している。だが、電力、水道、ガスは当然のように供給され、蛇口を捻れば、水が勢い良く流れる。コンビニには夜も灯りが付き、欲しいものは何でも手に入る。普段通りの生活は変わることはない。

 そんな中、地震の影響を肌で感じる瞬間があった。午後10時。明石海峡大橋を車で渡ったとき、ふと気が付いた。橋はライトアップされておらず、照明も薄暗い。そのまま、車を走らせると「節電実施中」の警告表示板。

 本州四国連絡高速道路によると、電力不足に対する政府の方針(計画停電など)を受け、3月17日より、高速道路上やトンネル内の照明の消灯や減灯などを実施しているのだという。

 真っ暗な明石海峡大橋とそれとは対照的に煌々と照らしだされている、対岸の市街地の灯りが印象的だった。「16年前の阪神淡路大震災の震源地近くでやっと、節電を意識するとは不思議な」。ふと、頭の中で思い浮かべながら、帰路へと付いた。

 今回の地震で福島第一原発が深刻な事故を起こし、電力の不足も予測されている。国家的な規模を上げて各界各所の関係者が「節電」を国民に呼びかけている状況だ。

 インターネット上でも、短文投稿サイト「ツィッター」で節電を呼びかける運動が展開されている。中でも反響を呼んでいるのは、「ヤシマ作戦」。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場した作戦名になぞらえ、発案者が節電を呼びかけている。閲覧者が作戦に共感し、日々、参加表明が増えているという。

 動画サイトyoutubeでは作戦を実施している若者が「自主節電」、「未曾有の危機」、と書いた紙をエアコンなどの電化製品に貼り、実践に移すその様子を投稿するなど、確実に賛同者は増え、国民の結束は深まっている。

 今回の地震を契機に国民の間に節電などの省エネ意識だけではなく、原子力発電に依存している日本の電力発電の在り方を変える大胆な発想さえ生まれはしないか。人々のつながりが環となり、新たな可能性を生む。
 
 (参考)国内年間発電量9551億kwh(2009年)経済産業省「エネルギー白書2010年」(原子力29% LNG29% 石炭25%)