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高速ツアーバス、新たな規制導入 国交省 (2/2)
ウェブマーケティングで急成長
高速ツアーバス発展の背景には、貸切バス車両の増加・実勢運賃水準の低下、インターネットの普及がある。12年および14年に実施された規制緩和により、受給調整規制が撤廃。貸切バス事業の新規参入が相次ぎ、1年間と通じて安い運賃で貸切バス車両を調達できるようになった。
 さらに、ウェブマーケティングを採用することで、広告宣伝・予約・決済コストが大幅に低下し、利用者ニーズに沿ったサービスを柔軟に提供できるようになったことが、高速バスツアーの急成長を支えてきた。

高速乗合バスの規制見直し
 一方、高速乗合バスが低迷する要因として、「高速バス市場の実態に現行の規制が必ずしもうまく適合していないのではないか」といった指摘もある。そのため、報告書では「高速バスの安全性や利便性が適切に確保されるよう、高速バス市場における競争条件を整備し、健全な発展と拡大を実現することが必要」として、1.高速乗合バスに関する規制見直し2.高速ツアーバスの乗合バス業態への移行3.インターネットを活用した総合的な情報提供・販売――の3点の対策が盛り込まれた。
 高速乗合バスの規制見直しでは、両社の長所を生かした形で新たな高速乗合バス規制を導入。柔軟な供給量と価格調整の実現に向け、乗合バス車両と貸切バス車両の併用を認めるほか、「アウトソーシング規制の緩和」「運行計画規制の緩和」を行う。
 具体的には高速バス事業について、一定の安全確保措置を前提に、「貸切バス事業者に対する、当該バス事業者の保有車両を使用する形態でのアウトソーシング」を可能にする。
 受託対象運行系統は、需要が大きい一定のキロ呈の高速バスで、受託可能車両数は1年間を通算して全体の3分の2以下(3分の1は直営)、1日当たりで全体の5分の4以下(直営1に対し委託4が上限)と位置付ける。
 安全確保措置として、運行委託の許可を受ける際、貸切バス事業者の過去の法令順守状況をチェックする。委託者側が業務を受託する貸切バス事業者の法令順守状況を定期的に監査し、必要に応じて是正措置を求めなければならない。
 運行計画規制の緩和では、便数、運賃料金の事前届出期間を現行の30日前から7日前に短縮。割引運賃については、上限額(普通旅客運賃以下)および下限額(普通旅客運賃の50%以上)の範囲内で届出を行い、座席の販売状況などに応じて機動的かつ柔軟に変更できるようになる。

貸切バス分野の対策
「高速バスツアーを含む乗合バス類似のツアーバス」や「会員制高速バス」の主催者と運行を受託している貸切バス事業者に対し、乗合バスへの移行を求める。
 24年度、25年度を集中移行期間と位置付け、円滑に移行できるよう指導・支援する。これに伴って必要なバス停留所の確保もバックアップしていく。
 貸切バス分野における対策では、1.法令順守体制の確保2.事後チェックの強化3.発注者と貸切バス事業者の相互理解の促進4.営業面での規制見直しなどが盛り込まれた。
 法令順守体制の確保策として、事業許可時の役員の法令試験の厳格化や運行管理者制度・整備管理者制度の強化、デジタル式運行記録計の装着義務付けを検討する。
 事後チェックの強化策では、より効果的・効率的な監査および行政処分を行うため、監査端緒別重点項目の設定のほか、駐停車違反、日雇い運転者選任違反にかかり処分基準の見直しなどの必要性を指摘。
 タクシーやトラックと同様の適正化事業実施機関創設といった、業界主導による法令順守向上に向けた体制整備も挙げた。
 そのほか、「貸切バス利用ガイドライン」の策定などを通じ、発注者と貸切バス事業者の相互理解を図るとともに、安全性の高い貸切バス事業者の選択を促進する仕組みづくりを目指す。
 運賃・料金や営業区域規制については今後、ワーキンググループを設け、さらなる検討を進める。