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関越道高速ツアーバス事故、規制緩和で増えすぎたバス事業者
 46名が死傷した高速ツアーバス事故は起こるべくして起こったと言ってよい。すでにバス協会に加盟する会員が中心となって、乱れたバス業界を正すために意見交換を重ねていた。

 西日本エリア(近畿・中国・四国・九州)のバス協会に加盟する貸切バス事業関係者35名は、2011年3月2日メルパルク大阪で田村充啓・近畿運輸局旅客一課長、大阪府バス協会の戎順正専務理事を来賓に招いて第2回「西日本エリア貸切バス事業のあり方についての検討会」を開催した。各社の課題と自己紹介を行い、貸切バスの安全に関する総務省勧告(公示運賃、旅行業界との連携、貸切事業の活性化)、安全規制強化(アルコール検知器の使用による酒気帯びチェックの義務化)、区域外営業の処分強化、高速道路の無料化政策と料金体系、貸切バスの安全評価制度等について、約4時間に渡り意見交換を行った。


  国土交通省の調べによると、貸切バス業界の全国での状況は、平成4年度と比較して、平成20年度では事業者数は317%の4,196社、車両数は138%の44,617台、実働率は11.1ポイント減の52.4%となっている。又、実働1日1車当たりの営業収入は52.4%の57,206円、在籍1日1車当たりでは39.9%の25,176円と極端に減少している。


  日本バス協会の調べによると、全国平均での実車1キロ走行当たりの経費は、平成4年度と比較して21年度の実績は、人件費は59%、燃料油脂費は130%、諸経費は76%となっている。平成12年に行なわれた規制緩和による中小事業者の新規参入増の影響で、供給過剰や運賃のダンピング競争が蔓延することによる収入の減少、原油の高騰や車両購入価格が年々高くなっている等の経費の増大という事業収支の悪化の中で、事業者は人件費の削減等の自助努力によってかろうじて経営を維持している状況が見て取れる。


  この検討会は西日本エリア内の日本バス協会に加盟する貸切バス事業者で構成し、公共交通業である貸切バス事業の今後のあり方と、その課題を検討し、貸切バスの安全性確保・事業の活性化・健全化を追求することを目的としている。又、日本バス協会貸切委員会の地域活動の一環として位置づけ、検討会での結果は必要に応じて日本バス協会貸切委員会に報告することになっている。会の開催については、年間2回程度をめどとし、各ブロックが持ち回りで行う。


  京都府バス協会貸切委員会委員長を務め、日本バス協会貸切委員会の副委員長でもある明星自動車(株)代表の谷口守弘氏と岡山県バス協会貸切委員会委員長会社の両備ホールディングス(株)副本部長の高谷啓道氏が発起人になり、昨年9月に第1回目が岡山で開催された。
 

  開会に当たり、谷口氏は本会の開催経緯について述べ「日本バス協会貸切委員会では、これまでは貸切委員長一人がすべてのことに対応されていましたが、近年重要な課題が山積する状況になり、昨年副委員長制を導入し委員長を補佐して行く体制となりました。3名の副委員長の中に私も任を持つこととなり、中央での論議を充実させるためには地方の状況をより的確に把握しなければいけないのではないかとの思いで、岡山の方達と打ち合わせを行い、西日本エリア全体で集まっていただき、課題について論議をしていくことを決めました。第1回の会合は昨年9月に岡山県バス協会のご支援のもと岡山で開催致しました。他のエリアに於いても同様の検討会が開催されればと願っています」と検討会の設立の経緯を説明し、本会の趣旨については「社会的使命である貸切バスの安全を確保し、観光産業における輸送部門としての役割、地域住民の移動手段、災害等異常事案発生時の緊急輸送手段等の社会的資本を担う事業を我々が継続して行っていくために、課題を分析しあるべき方向性を論議していきたい」と話した。
 

  来賓の田村旅客一課長は、中央でおこなわれている「バス事業のあり方検討会」や総務省勧告に関する資料をもとに挨拶を行った。「運賃のダンピングはいけないことで、運賃は原価計算に基づき算出されており、それが守れない場合には無理が生じるのだと思います。挨拶などでよく申し上げるのですが、建物、食べ物、乗り物は命が伴うサービスであるということ。また、運賃の中には安全料が含まれていることをお客様に理解していただきたいということです。貸切バスの運賃についてはお客様に直接運賃額が見えないので、乗合バスやタクシーとは違う状況があると思います。しかし、運賃のダンピングは旅行業者だけではなくそれを受けるバス会社の方にも問題があると考えております」と述べた。

 ※意見交換の内容も連載します。