自動車ニュース
第1回 「労務リスクの正体」 (2/3)
会社を守れる経営者に

 背景に、働く人の意識の変化があることは先の通りですが、より重大な要因は、法律改正を含む社会制度の変遷です。ただ、多くの中小企業経営者は、この時代の変化に対応できていないのが現状です。市場の動きや取引先の情報には敏
感な経営者でさえも、労務関連には疎い人が多く見られます。
 中小企業の経営者であれば、経理や営業だけでなく総務や雑務まで、全てをこなしていることも稀ではありません。となれば、労務管理に対応している暇が充分に無いのも当然なことかもしれません。
 しかし、ひとたび労使関係に亀裂が生じると、その修復や対応には多大な費用や時間、労力が必要とされます。これからの企業経営にとって労務リスクの管理は、最優先に考えるべき課題のひとつです。
 日頃から対策を取らずに、何か問題が生じた時にだけ 社労士や弁護士など専門家を頼る。 ...このような従来の方策は通用しない現状を認識し、早く対策を講じたいものです。この連載をきっかけに、会社を守れる経営者を目指しましょう!


雇用契約の基本

 社員を雇えば、会社はその社員と“雇用契約”を結んだことになります。“ 契約”というと大げさに思われがちですが、普段 私たちが店先で大根を1本買うのも同じ契約、すなわち 売買契約です。雇用契約の場合は、大根ではなく 労働を売買する契約、つまり 約束のことです。
 何のためにこんな説明をするのかというと、ここで大切なポイントはひとつ。契約であるからには、売買をする双方に権利と義務が発生するということです。(これを債権と債務といいます。)
 会社は指示するように社員を働かせる権利と賃金を支払う義務があり、社員は給料を受け取る権利と会社の指示通りに働く義務があります。(当り前過ぎますか? 現実はどうでしょう? 中には義務を果たさず、権利ばかりを主張したがる人も...。この話は、また次回以降に。)
 肝心なのは、この権利と義務がどのような内容(条件)で取り決められているかです。大根を買うにしても、どの程度のものがいくらなのかが不明では、売買が成り立つはずはありません。