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2016年のデジタル化にどう挑むのか? 富士通テン (2/2)
―クラウド配車についてはどう考えていますか?
 本来クラウドは、ピーク時に合わせた設備投資をせずに済むのがメリットです。クラウド型だけにこだわらず、ピーク時とそれ以外の時で、それぞれに合ったリソースを使う方が有効ではないでしょうか? 大きな規模になりますと、24時間稼働していますし、負荷の波もあまり変動しないので、クラウド型はタクシー配車の業務には適していないと考えています。
 ただし、1台のサーバーを複数社でで保有し、複数のタクシー事業者に配車システムを提供するのであれば、クラウド配車はあり得ると思います。1社で負担するとコストが大変なので、複数社で連携して負担を減らすと言うのは、有効な考え方だと思います。 通信回線は携帯回線でもデジタル無線でも、どちらでもあり得ると思っています。「携帯回線だからクラウドシステム」というのではなく、システム処理の方法をどうするか?については、通信回線とはまた別の問題だと考えています。

―では、コスト面はどのぐらいの規模であればメリットが出てくるのですか?  台数規模が大きくなってくると、携帯回線の使用料などのランニングコストがどんどん膨らんで行きます。そのため、あまり得策ではないかと思っています。また、基地局の数によっても変動しますし、何年間で見るかによっても変動します。ただ、現在、携帯回線を利用したタクシーの無線配車についても開発を行っています。―デジタル無線と携帯回線のメリット/デメリットを教えて下さい。
 デジタル無線は自社でサーバーなど構築しますので、繁忙期や災害時でも、自社の設備に支障がなければ影響を受けません。逆に、配車エリアを大きく拡大させたりするとコスト増になります。
 携帯回線はその逆で、ランニングコストが掛かってくることです。

―現在開発中の“ 携帯回線を使用した配車システム”は、どのような状況ですか?
 通信部分をデジタル無線から携帯回線に移行することは、実はそんなに難くありません。デジタル無線だと車番によって電波帯を変換したりするシステムを構築していたりしますが、携帯回線だとそういった制御は必要なくなります。ただ、やはりコスト面での負担が大きくなりがちなので、通信量をできるだけ少なくする工夫が大切だと考えています。
―タクシーの集客につながるような、他のシステムやサービスとの連動は考えていますか?
 弊社のシステムを導入すれば、他のアプリなどと連携して集客を呼び起こせるようなアイディアも、考える必要があるでしょう。今「繋がるシステム」をキーワードに、通信ネットワークを絡めた商品の開発を、全社的に取り組んでいます。これからどう動いて、どう組んでいくのか?今後の大きなテーマのひとつです。
―では、今後、決済システムとの連動は考えられていますか?
 富士通でも、決済システムを持っていますので、そことは連動して行きたいと考えています。 まず手をつけるのは、「タクシーメーターとの連動よりも、決済システムとの連動」ではないでしょうかか?

 国内シェアトップの富士通テンでは、デジタル無線化への移行に先駆け、小規模向けの「Type L」を発売するなど対応を進めてきた。さらにスマートフォンの普及で、新たなニーズも生まれてきた。これからは、同社がサーバービジネスなどを含めたサービス展開をどこまで進めるのか?注目される。
 ただし、需要が喚起されても、配車された乗務員の印象とアプリが連動して認識されるため、より乗務員の教育が鍵になってくるのではないだろうか?