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マツダ、第65回自動車技術会賞受賞
マツダは5月21日、同社の研究者が「第65回自動車技術会賞」において、公益社団法人自動車技術会より、高効率オートマチックトランスミッションSKYACTIV-DRIVE(スカイアクティブ・ドライブ)の開発で「技術開発賞」を1件、新世代クリーンディーゼルエンジンSKYACTIV-D(スカイアクティブ・ディー)の予混合型燃焼の研究および人の視覚特性の分析によるワイパー払拭に関する研究で「論文賞」を2件、車体構造の振動・音響伝達に関する研究で「浅原賞技術功労賞」を1件受賞したと発表しました。

「自動車技術会賞」は1951年に自動車工学および自動車技術の向上発展の奨励を目的に設けられ、自動車技術における多大な貢献・功績を認められた個人に贈られるものです。マツダのSKYACTIV(スカイアクティブ)技術が「技術開発賞」を受賞するのは、「SKYACTIV-G(スカイアクティブ・ジー)」「SKYACTIV-D(スカイアクティブ・ディー)」に続いて3回目です。

また、今回の受賞により、SKYACTIV技術およびその技術を搭載したクルマに対する国内外の主要な賞は通算200件となりました。(マツダ調べ)

マツダは今回の受賞に際して「今後も『走る歓び』と『優れた環境安全性能』の両立を目指した技術開発を進め、お客さまの人生をより豊かにし、お客さまとの間に特別な絆を持ったブランドになることを目指してまいります。」とコメントしています。

以下、敬称略

■技術開発賞
受賞対象:走る歓びと環境性能を両立する新型オートマチックトランスミッション
受賞者:土井 淳一(どい じゅんいち) マツダ株式会社 パワートレイン開発本部、丸末 敏久(まるすえ としひさ) マツダ株式会社 パワートレイン開発本部、鎌田 真也(かまだ しんや) マツダ株式会社 パワートレイン開発本部、三谷 明弘(みたに あきひろ) マツダ株式会社 統合制御システム開発本部、坂 時存(さか ときもり) マツダ株式会社 パワートレイン開発本部
受賞理由:「高い伝達効率」「ダイレクト感」「スムーズで力強い発進」を満足するトランスミッションの開発は市場から継続的に求められている。本自動変速機は、トルクコンバータの発進直後からのロックアップ実現を狙い、最大の課題であった振動問題を解決するため、ねじりダンパーの低剛性化とロックアップクラッチの制御精度と耐久性の向上を実施した。また、機構構成要素の抵抗低減技術、高応答かつ高精度の変速制御を可能にするメカトロニクスモジュール、モデルベース制御の採用等を行った。こうした技術開発は動力伝達系技術の進歩発展に貢献するものと高く評価される。

■論文賞
受賞対象:予混合型ディーゼル燃焼による排気と燃費の低減(第3報)
−モデルベース着火時期制御と多段噴射によるロバスト性の改善−
受賞者:志茂 大輔(しも だいすけ)マツダ株式会社 パワートレイン開発本部、角田 良枝(かくだ よしえ) マツダ株式会社 パワートレイン開発本部、金 尚奎(きむ さんぎゅ) マツダ株式会社 パワートレイン開発本部、丸山 慶士(まるやま けいじ)マツダ株式会社 パワートレイン開発本部、鐵野 雅之(てつの まさゆき) マツダ株式会社 パワートレイン開発本部
受賞理由:「予混合型ディーゼル燃焼は、NOxとすすを大幅に低減することが可能であるが、一方では燃焼音の増大や未燃損失による燃費の悪化、また、過渡運転時には着火時期の不安定性に起因する燃焼変動などが課題であった。本研究では、これらに対応するため、低圧縮比と高性能ピエゾ駆動式インジェクターによる近接多段噴射を用いて、適度に不均一化された予混合気を形成することで、燃焼音と燃費の改善を実現した。さらに物理モデルに基づいた着火遅れの予測式に、噴霧混合気形成に関わる諸因子を入力項として追加し、着火遅れを精度良く予測するモデルを構築した。この着火遅れモデルによる着火時期制御システムを用いることで、過渡運転時に安定した燃焼制御を実現した。これらの技術によって低エミッションと低燃費を実現したことは高く評価される。

■論文賞
受賞対象:人の視覚特性の分析によるワイパーの払拭欲求発生要因の解明と払拭特性の考察
受賞者:岩瀬 耕二(いわせ こうじ) マツダ株式会社 技術研究所、新部 忠幸(にいべ ただゆき) マツダ株式会社 技術研究所、松岡 悟(まつおか さとる) マツダ株式会社 技術研究所
受賞理由:運転時の視界は雨滴の付着で大きく悪化し、安全・快適な走行を実現するにはオートワイパーのような補助装置が有効であり、これらの設計にはドライバーの感覚特性や心理特性に適合させる必要がある。本論文では、ドライバーの払拭欲求発生の要因分析と実車検証から影響因子の寄与度を評価し、従来の雨滴の付着率、車速、周囲の明るさだけでなく、雨滴の単位時間当たりの付着個数、大きさ、付着位置の判定が重要であることを定量的に明らかにしている。さらに、視覚特性との関係を調べ、払拭欲求の発生は視覚刺激への注意の引付によって発生し、雨滴に注意が引き付けられると周辺視野における認知反応が遅れることを明らかにしている。これらの知見は安全・快適なオートワイパーの設計に寄与するだけでなく、ドライバーの注意状態に合わせた新たな情報提供方法の開発などに貢献するもので高く評価される。

■浅原賞技術功労賞
受賞対象:軽量高性能な車体構造の研究開発に関する永年の功績
受賞者:杉原 毅(すぎはら つよし) マツダ株式会社 総務・法務部
受賞理由:受賞者は、30年余にわたって自動車の車体構造の研究開発に従事してきた。中でも、振動や騒音に関わる計算解析技術や、構造最適化技術、NVH(エヌ・ブイ・エイチ、Noise Vibration Harshness)性能に関連する振動現象、特に音響現象の解明に重点的に取り組み、軽量化と車体振動伝達の低減の両立構造の開発を実現した。また、国内外の発表を通じて、世界の車体構造、NVH技術の進展に大きく寄与した。