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富士通、5G向けにマルチアクセスと12Gbpsの通信速度を達
富士通研究所は6月9日、次世代移動通信システム「5G」に向けて、ミリ波ビーム多重化によるマルチアクセスを実現しこれを発表しました。この技術によって、複数のユーザーが同時に大容量通信を行っても速度低下を最小限に抑えることが可能になります。

富士通によると、「従来、多数のユーザーが同時に通信すると互いの電波が干渉するため時間や周波数を分割して使う必要があり、通信速度が低下するという課題がありました。」とのことです。そこで同社は今回、60ギガヘルツ(GHz)のミリ波帯において、複数のアンテナ素子を並べたアレーアンテナによるビーム形成時に発生する目的方向外の電波を従来の5分の1に低減する技術を開発しました。

開発技術で細い電波ビームを多重化することで、多数のユーザーが同時に通信を行っても互いに干渉せず通信ができ、大容量通信時の速度低下を最小限に抑えることが可能になります。社内実験では4本のミリ波ビームを形成することで、世界最高レベルである12Gbpsの通信速度を実現することを確認しています。

本技術の詳細は、6月15日(月曜日)に行われる「電子情報通信学会 短距離無線通信研究会(会場:富士通 川崎工場)」にて発表します。

○開発の背景
スマートデバイスの普及に伴い、無線データ通信のトラフィック量は1年で2倍弱のペースで増大しており、10年で1,000倍の通信容量になると言われています。2020年頃には2010年比1,000倍となる10Gbpsの通信速度を実現する次世代移動通信システム「5G」の無線通信技術の研究が世界各国ですすめられています。我が国でも様々なアプローチで無線通信の大容量化の研究が進められています。

ユーザーあたりの通信容量を増大させるためには、携帯電話基地局やWi-Fiアクセスポイントがカバーするエリア半径を小さくしてエリアあたりの収容数を減らすことや、ミリ波帯などの広い帯域幅を利用できる周波数帯を使用するなどの方法があります。

○課題
ミリ波帯では、アンテナサイズを小さくすることができるため、アンテナ素子の数を増やすことで空間を小さく分割し、スモールセル方向に照射することが見込まれます。しかし、従来の設計手法によるアレーアンテナでは、ビーム形成時に、目的方向の電波(メインローブ)とは別の方向の電波(サイドローブ)が発生してしまうため、ユーザー多重化のために複数のアレーアンテナを設置するとビーム間で干渉が起き、多数のアレーアンテナを並べることが困難でした。

○開発した技術
60GHz帯のミリ波を用いて、低サイドローブの細い電波ビームで64パッチのアレーアンテナを試作しました(図2、図3)。通常の電力密度が一定のアレーアンテナではメインローブとサイドローブの電力比は13dB程度ですが、アンテナ給電回路を工夫し、中心付近のアンテナ素子は電力を大きくして、周辺に行くに従い電力を小さくする配分で、従来から7dB(従来比約5分の1)改善した電力比約20dBの低サイドローブを実現しました。

開発技術により、少しずつ異なる方向を向けた複数のアレーアンテナを配置することで、複数ユーザーが同時に通信しても互いに干渉しないようにすることが可能です。

○効果
60GHzの周波数において1.2GHzの帯域幅で1ユーザーあたり3Gbpsの通信容量を実現する無線機を試作し、4ユーザーで互いに干渉せず、世界最高レベルである12Gbpsの通信容量を実現しました。

開発技術を用いることで、多数のユーザーが密集した場所で同時に通信しても、ユーザーあたりの通信速度低下を最小限に抑えることができ、高速で快適な通信を行うことが可能になります。高画質の動画視聴や、撮影動画をクラウドにアップロードする場合などでも快適な、通信環境を提供できます。

○今後
富士通研究所は、ミリ波無線機のさらなる高速化とビットレートあたりの低消費電力化を進め、2020年頃の実用化を目指します。