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トヨタ、新開発「GD」系ディーゼルエンジンの技術概要を発表
トヨタは6月18日、新開発GD系ディーゼルエンジンの技術概要を発表しました。同社はこの度、「低燃費と、発進時から力強い加速をもたらす動力性能、ならびに高い静粛性を実現させた」として2.8L直噴ターボディーゼルエンジン「1GD-FTV」を新開発しました。

世界初のTSWINを取り入れた次世代高断熱ディーゼル燃焼の採用などにより、世界トップレベルの最大熱効率44%を達成したとのことです。これにより、従来型の「KDエンジン」と比べ燃費が最大で15%向上するとともに、ダウンサイズしながら最大トルクは25%、低速トルクは11%向上したとしています。また、トヨタ初となる尿素SCR*6システムの採用などにより、世界で最も厳しい排出ガス規制である欧州EURO6および平成22年(ポスト新長期)排出ガス規制*7などに対応します。

今回、新開発のエンジンは、次世代高断熱ディーゼル燃焼を採用することで、気温−40℃以下の極寒地域や海抜4,500mを超える地域など世界中のあらゆる地域において、高熱効率で、静粛性かつ力強い走りを実現します。また、触媒の近接配置などによる浄化率向上、従来型比の約30%小型化、排気レイアウトの18種類から3種類への集約などにより、グローバルな車両展開性の大幅な向上と環境負荷低減を両立したそうです。

その結果、グローバル展開している従来型の「KDエンジン」を、2016年までに年間70万基規模、約90の国・地域で、2.4L直噴ターボディーゼルエンジン「2GD-FTV」を含めた新開発エンジン群である「GDエンジン」に刷新することになったようです。2020年までに150以上の国・地域に展開することが可能となるとしています。なお、「GDエンジン」は、2015年5月にタイで発表した小型ピックアップトラックの新型ハイラックスに加え、6月17日に一部改良したランドクルーザープラドにも搭載しています。

トヨタでは「適地・適時・適車」の考えのもと、「世界中の地域ニーズから、お客様への迅速な提供、商用車・SUVなどの用途への対応まで、ディーゼルエンジンを引き続きトヨタのエンジンラインアップを支える基幹ユニットと位置づけ、豊田自動織機をはじめ、トヨタグループの総力を挙げて、よりクリーンで競争力のあるディーゼルエンジンの開発に邁進していく。」とコメントしています。

新型「1GD-FTV」の特徴
世界初のTSWINを取り入れた次世代高断熱ディーゼル燃焼や小型高効率可変ジオメトリーターボチャージャーを採用することで、世界トップレベルの熱効率44%を達成し、燃費に加え、発進トルクや加速レスポンスなどの大幅な向上を実現
次世代高断熱ディーゼル燃焼
より空気の入りやすいポート形状とし、シリンダー内へ流入する空気量が大幅に増大。加えて、新開発のピストン燃焼室形状と、噴射圧をさらに高圧化・高制御化したコモンレール式燃料噴射システムにより、燃焼室内の空間に燃料をより効率的に噴射することで、空気の利用を最大化し、高熱効率と低エミッションを両立
メイン噴射の前に、外気の状態に合わせた精密なパイロット噴射により着火遅れ時間を短縮することで、世界中の過酷な環境下でも安定した燃焼を実現し、高熱効率で高い静粛性を維持
世界初のTSWINを採用。断熱性および放熱性の高い、すなわち「熱しやすく冷めやすい」シリカ強化多孔質陽極酸化膜(SiRPA*8)をピストン頂部にコーティングすることで、燃焼時の冷却損失を最大約30%低減させ、より一層の熱効率向上に寄与
小型高効率可変ジオメトリーターボチャージャー(トヨタ内製)
従来型より約30%ダウンサイズしながらも、新開発タービンの採用などによるタービン効率の向上を図るとともに、新開発インペラの採用により、アクセル操作に対する瞬時のレスポンスと、幅広い回転域での最大トルクの発生に貢献
尿素SCRシステム(トヨタ初)
トヨタ独自開発のコンパクト高分散尿素システムを採用し、大気汚染の原因の一つと言われるNOx(窒素酸化物)を最大99%浄化
EURO6ならびに平成22年(ポスト新長期)排出ガス規制などに対応

*1 2015年6月現在。トヨタ調べ
*2 燃焼時の冷却損失を低減させる燃焼改善技術。現時点のみ国内仕様
*3 燃焼時の損失の中でも、特に冷却損失に焦点を当て、冷却損失を大幅に低減させる燃焼技術
*4 トヨタ算定値
*5 2.8L「1GD-FTV」と2.4L「2GD-FTV」の両エンジン合計値
*6
SCR Selective Catalytic Reduction。欧州、国内仕様のみ
*7 国土交通省の低排出ガス車認定制度
*8
SiRPA Silica Reinforced Porous Anodized Aluminum