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【特集】 事業仕分けの波紋 バス車両購入費補助金
 山と山の間にぽつりぽつりと民家が立ち並ぶ兵庫県北部の過疎地域、養父市。行政刷新会議の事業仕分けの中でバス車両購入費補助金(10億円)に関しては廃止という結論が下された。今回の結果は都市部より地方の過疎地域での影響がより大きいと言われている。過疎地域の自治体やバスを運行しているバス業者はこの結果をどう受け止めているのだろうか。
 
 兵庫県北部の過疎地域を走るコミュニティバスなどを市町村から委託されている全但バス(本社・兵庫県養父市)は今後のバス事業への影響を心配する。
 
 −今回の結果をどう受け止めているか−
 バス協会としての統一見解を出そうとしている。事業反対内容と再検討をお願いすると言ったものだ。
 
 当社のことを考えると、昨年の10月にバスの大削減(3割カット)を行い但馬地域のバス路線の大再編で路線を切り離し市町村に投げかけさせていただいたところだった。あれから1年が経ち、経営維持のメドが経った矢先に事業仕分けの結果が出た。今後は各地域の事情を考えながら最終結果がはっきりとすれば、更にバス路線の廃止も検討していく必要があると思う。
 
 −事業仕分けの結果を受け、今後、バス業界は更に厳しくなるのでは−
 今は、21年度の助成金の件で大変だ。その大変な時に、事業仕分けのバス事業に関する結果が出た。結論は各自治体の判断に任せる、バス購入費補助廃止というものだが、中央では自治体の判断に任せると言いながら、自治体は運営できる制度や体制が整っていない。国から自治体に丸投げして地方がバスなどの公共交通機関を運営できるのだろうか。
 
 地方の公共交通機関としての役割を果たすバスは車を利用できない交通弱者を支える意味も持っている。交通弱者の声が社会に届いていないと思う。 
 一方、全但バスにコミュニティバスの運行を委託している養父市はバス運行・利用に関する事業仕分けの結果について、「養父市や過疎地域にとっては、移動性の確保が重要で、引き続き国の支援が必要。更に必要となる支援の拡大を期待している」と話す。
 
 また、事業仕分けの結果については、「自治体判断に任せるというような意見も交わされたようだが、モビリティの確保策は、関係法令に従い、国・県等の補助に頼って実施している為、法令の制約や補助の要件などに縛られた中での実施であり、自治体判断のみで、この対策が実施できるものではない。モビリティ確保については、個々の事業で判断するのではなく、全体的に見直す必要があるのではないかと思う」とコメントした。


(編集後記)過疎地域を支えるバスなどの公共交通機関に対する中央と地方の眼差しは違う。過疎地域で暮らす交通弱者に対して国や自治体はどう応え、地域の公共交通をどう支えていくのか。国からの一方的な意見だけではなく、もっと地方の声を聞いてほしい。