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路線バスの可能性を考えるシンポジウムin京都
「路線バスの可能性を考えるシンポジウムin京都」〜利用のボトルネックの発見と解決〜(近畿運輸局、近畿陸運協会、近畿バス団体協議会共催)が12月3日、京都市の龍谷大学響都ホール校友会館で開かれた。
 
基調講演は交通ジャーナリストの鈴木文彦氏が「路線バスが流行らない根本原因」について、1.地域のニーズのみに設定し、外来客には使いづらい。2.路線がつながらない。相互乗り入れもない。3.路線が分からない。行先表記が分かりづらい。―等を現状分析。そして改善策として、インフォメーションは、利用者が本当にほしい情報の提供(位置、路離方角、マップ、時刻表等が統一性がある)、バス停表記(鉄道、バス、コミバスとの接続等)、バス表記(行先、運賃不安解消)、バス車両の工夫等改良点を述べた。そして「WEB情報が発達しても一番安心できるのは人による案内。バス案内人、乗務員のフォローも大事」と“ハード(hard)からハート(heart)”がキーワードとした。
 
次に澤瀧晴彦・しずてつジャストライン(株)営業部地域交通課長が、バスのりば誘導のガラス面・床面表示、バス停表示の改良、添乗員サポート、高校生への利用促進、子どもを対象のバス乗り方教室の開催など取り組み事例を講演した。
 
パネルディスカッション「利用のボトルネックの発見と解決」では、コーディネーターに井上学氏(平安女学院大学准教授)、パネリストに勝山智彦氏(しずてつジャストライン(株)(取)営業部長)、坂部直成氏(南海りんかいバス(株)社長)、児玉健氏(京都バス(株)運輸部営業課長)、辻堂史子氏((株)シティプランニング)と蜂屋ゆき、冨重真帆両立命館大学生、コメンテーターは鈴木氏と木村淳三氏(近運局自動車交通部次長)で進行した。
 
井上氏は地理学者の立場から都市の人口形成(老人、若者)の地域的差異に注目、車を持たない人のライフスタイルとしてのバス利用から、バスの乗り方ガイド、乗り方教室等おもてなしコンシェルジュでバスを乗りやすく構築する「デジタルだからこそアナログを。鈴木先生のハードからハートと同じだ」と訴えた。
 
坂部氏は、高野山内のバスは従来の日帰り、物見遊山から宿泊、異文化体験へシフト、外国人も多く、現場の乗務員(特に若手)が山内の案内、乗り方、運賃等も案内した。自分の足で歩いて体験する客にバスと徒歩を念頭にしたサービスの提供を報告。
 
児玉氏は、京都市洛北、嵯峨嵐山方面の営業エリアで京都市バスとのICカード対応、車内案内モニターも市バスに合わせて、「シームレス化」を展開、業者間で利用者の不安不信の解消に努めているとして、事業者の客の取り合いからバス全体の顧客獲得を目指すとした。
 
辻堂氏は、バス活性化支援事業の立場から、「地方の自治体はバス事業の支援を知らない。利用者、車業者、自治体との連携が重要」と述べた。
 
勝山氏は人材確保(乗務員)で普通免許を取得後、3年間事務職、整備などの仕事に従事して大型2種を取得する養成バス運転士の制度を報告。
 
大学生の2人は、バスの定期券売り場の不明、ICカードの利用方法や乗り方、バス停等も分かりづらいと訴えた。
 
木村氏は、行政としてバス事業への支援を説明しつつ、自治体、事業者と共に利用者とのコミュニケーションの重要性を述べた。
 
井上氏は「皆さんの話を聞き、まだまだアナログ、ハードからハートを痛感した。そして良いモノはマネる。会場(アバンティ)に因んでバスの前進を願いたい」と締めた。