自動車ニュース
路線バスの可能性を考えるシンポジウム
「路線バスの可能性を考えるシンポジウムin兵庫」〜交流人口拡大による地域活性化と地域住民の生活維持〜(近畿運輸局、近畿陸運教会、近畿バス団体協議会共催)が、2月15日、兵庫県民会館けんみんホールで開かれた。

基調講演は、井上学氏(平安女学院大学国際観光学部准教授)が「よその街のバスは難しくない〜公共交通で訪問できる地域になるための情報整備〜」の演題で行った。交流人口を拡大するための手段として観光を挙げ、観光が成立するためには目的地までの移動のためにバスが有用であると述べた。また、移動需要の他に、ストーリー性をもたせて目的地の魅力を大きくすることや、ガイドブックやホームページによる事前情報、観光マップ等の事中情報・事後情報などを活用し、移動のハードルを下げることといった派生需要の拡大が重要であるとした。

次に、稲田祐治氏(加越能バス(株)取締役社長)が、他の公共交通機関、路線、近隣の観光地との連携や、生活の足と観光輸送を併せ持ったバスとして富山の世界遺産バスの取り組み事例を紹介した。

続いて、パネルディスカッションが「路線バスの交流人口拡大による地域活性化と地域住民の生活維持」の演題で行われた。コーディネーターは井上学氏(平安女学院大学国際観光学部准教授)、パネリストは稲田祐治氏(加越能バス(株)取締役社長)、本間和典氏(神姫グリーンバス(株)代表取締役)、橋本倫尚氏(なら交通(株)乗合事業部課長)、上月敏之氏(小野市総合政策部課長)、竹井正子氏(公益社団法人ひょうごツーリズム協会ホスピタリティマネージャー)、コメンテーターは清水俊博氏(神戸運輸監理部兵庫陸運部首席運輸企画専門官)で進行した。

本間氏は、越智川名水街道自転車くだりや、冬季地域活性プロジェクトキャンペーンバスなど交流人口増加への取り組みを報告した。

橋本氏は、路線バス運賃キャッシュバックキャンペーンやぐるっとバスの運行など、奈良県の路線バス維持・活性化に向けた取り組みを報告した。

上月氏は、小野市における観光ルートの策定等のらんらんバスの取り組み事例を紹介した。

清水氏は、交流人口の拡大と路線バスの維持のため、兵庫県の観光地をまわる路線バスルートの検討会が発足したことを報告した。

井上氏は「いかに地元の人を巻き込むことで交流人口を増やすかがポイント。今ここで盛り上げることによって、未来は広がる」と締めた。

最後に、長尾真氏(公益社団法人兵庫県バス協会会長)が「現在、地域創生が各地で進んでいる。よそ者、若者、馬鹿者が必要だと言われているが、我々バス事業者も、馬鹿になってやることがもっとある。やり続けることで失敗はない。今後も粘り強く取り組んでもらいたい。その基本には安心、安全があることを肝に銘じ、他から来られる方に不安を感じさせないバスづくりに努めていただきたい」と閉会挨拶を述べた。