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上杉雅彦会長を偲ぶ
日本バス協会会長の上杉雅彦氏(神姫バス代表取締役会長)は12月10日、入院先の病院で急逝した。72歳だった。

昨年6月、故人の意欲と、業界の強い支援と、関係機関の後押しで日バス協会長に就任した。就任時「歳も歳だから」と短期の務めを語ったが、さぞかし無念だったに違いない。バス業界の関連法の制定、整備でバス復権の追い風来たりと「バス再生のチャンスは今しかない」と全国に呼びかけた。

去る11月25日の近畿バス事業者大会でも「相談を待ってくれる行政に出向き、大きなチャンスに動かぬ手はない」と訴えたが、これが最後のメッセージとなる。事業においてはバス事業の浮沈を経験、攻めの論陣を張って後に引かなかった。常々「企業のトップは駅伝のランナー。次へとタスキを確実につなぐこと」と語り、言葉どおり手渡した。誠実な企業戦士は、地方バスの雄たる”神姫魂”をも次へと伝えたことだろう。酒を愛し、酒席は人情味に溢れ奔放だったが、時には真面目にメモを取る姿もあった。

通夜の式場のパネルには、夫人、お孫さんたちに囲まれた温和な姿が流れた。喪主敏生氏は、600余の参列者に「生前の父は『俺の周りは敵ばかり、葬式には誰もきてくれんぞ』が口癖でした。しかしこれほどの会葬を頂きありがたい」と熱い謝辞を送った。途切れることのない会葬の列に立って、故人は大勢の味方に囲まれた心豊かな生涯だったと偲びつつ、霊前に永久の別れを告げた。