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コミバスシンポジウム(近運局・交通エコロジーモビリ
3月7日、神戸市中央区の県民会館で、近畿運輸局と(公財)交通エコロジー・モビリティ財団の共催で第14回地域バス交通活性化シンポジウムが開かれた。基調講演は井上学・平安女学院大学国際観光学部准教授が行い「今後は公平よりも公正が重要で、ニーズがある所にサービスを届けないといけない」と述べ、特に汗かく地域がバスを動かすとして「バスを地域の資産と考えるならば地域で運営することも可能。沿線住民の積極的な参加によって、需要が見えてくる」とした。
取り組み事例で、西宮市生瀬地区の14人乗りの小型バスで運行中の「ぐるっと生瀬」と、神戸市垂水区塩屋地区の通常のタクシーで4月から本格運行する「しおかぜ」が紹介された。

「ぐるっと生瀬」は平成27年10月より本格運行され、28年には国土交通大臣賞他、計4賞受賞、今年で2年目を迎え、1日平均91.7人の利用がある。また利用料金は300円となっており、生瀬地区合計で停留所数は43カ所ある。

成功のポイントとして山本一男・西宮市都市局都市計画部交通計画課課長は「地域主体で経営感覚を持った取り組みが大きいと思う。コミバスが単なる移動手段ではなく、地域の活性化に結びついている」と述べた。

また赤字になった際には、西宮市の助成制度を利用して欠損額を全額補填する仕組みがあり、1年間で20,599人の利用、収支率は約88%となっている。

運行は阪急タクシーが行なっており、花田崇昭・阪急タクシー株式会社営業部営業企画室副室長は「コミバスを走らせたことによって、車内が地域の交流場となっている。地域に寄り添うことによって、この取り組みが実現した」とした。
続いて「しおかぜ」は平成28年2月より垂水区の塩屋谷川周辺で試験運行され、道路の幅員が狭いこともあって、山陽タクシーは通常のタクシーを使用しての運行を開始した。

しかし、利用者の多い時間帯に積み残しが発生していることから、乗客定員6名のミニバン型車両を今後導入する予定。

また当初、定時定路線型(300円)、デマンド型(500円)で試験運行を行っていたが、デマンド型は採算が合わなかったため、本格運行の際は定時定路線型のみとなる。またバス停は全部で30カ所あり、2回目の利用者数では2ヵ月間の集計結果で5,995人の利用があった。

1日乗車目標は100名で現状平均50〜60名程度、赤字リスクの解消として広告掲載の依頼、自治会への協賛金のお願い、行政への支援要請をする予定。

滝本剛・山陽タクシー株式会社代表取締役社長は「コミバスは地域の熱意が大切だが、行政のバックアップも不可欠。初期投資などは非常にお金がかかり、バス停設置などの法的緩和が欲しい」と述べた。

パネルディスカッションでは青木智幸・神戸市住宅都市交通政策部公共交通課バス支援担当係長が「神戸市は非常に坂の多い地区で、高齢化に優しいコミバスの需要が高まっている。地域が主体的に取り組みたいと考えているところから今後の支援をしていきたい」と述べた。

質疑で「バス停で乗降するというのが基本だと思うが、停留所以外でお客を拾うことは可能ですか」とあったが、道路全体がバス停という考え方になるため実現は難しいと回答された。

最後に井上氏が「タクシーとバスが協力することによって、公共交通の重要性が再認識されることが大きな目標だと思う。コミバスが全国的に広がって行くのを願っています」と述べ、締めくくった。