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地域公共交通活性化シンポジウムin関西ー近畿運輸局
近畿運輸局(坂野公治局長)は1月19日、大阪私学会館で「地域公共交通活性化シンポジウムin 関西」を開催した。基調講演は大井尚司氏( 大分大学経済学部准教授) が行い、西島義美氏(宍粟市まちづくり推進部市民協働課副課長)ら、大渕浩一氏( 福岡市南区柏原三丁目町内会会長) らがそれぞれ事例紹介を行った。

大井氏は「事業者がいつまでもあると思っていませんか」などの「5 つのいませんか」の切り口から地域公共交通が抱える問題を指摘した。事業者や自治体のサービス情報(コミュニティバスなど) の発信手段の問題点について触れ、「路線図・停留所を全て記載するなど、利用客にとって過分な情報を出すことで、かえって必要な情報がわからなくなる。知識のない人には情報をシンプルにして提示し、更に詳しく調べたい人はお問い合わせに誘導するなど、どの相手に伝えるかに応じレベルを合わせることが重要。自治体や事業者よりも知識がない人の目線で情報の発信をしていく必要がある」と語った。
また、地域公共交通に携わる事業者や自治体が、実際に乗って、歩いて、「テマ・ヒマ・オジャマ」を惜しまず行動することを通し、「遅れて走る、時代遅れ、ニーズ遅れ」の「遅延」交通から、地域のニーズにつながり、地域の力で支える「地縁」交通への転換が必要であると熱弁した。

西島氏らは「住んでいる地域でいつまでも暮らせる」という基本理念のもと抜本的な公共交通の再編を行った宍粟市の事例について講演した。集落と結節点( 生活圏) は小型バスを用い、結節点から結節点は大型バスを用いる交通ネットワークを構築し、運行開始から1 年間で利用者数は60% 以上増加した実績などを紹介した。

大渕氏らは福岡市南区柏原三丁目地区へ路線バスの乗り入れを果たした事例について講演。町内会が中心となった利用促進活動、西日本鉄道株式会社(西鉄) による住民のニーズを反映した運行時刻の設定など、地域住民・バス事業者・行政の3者が、それぞれの役割を共有し、一体となった課題解決への取り組みなどを紹介した。

その後、土井勉・大阪大学大学院工学研究科教授をコーディネーターに、講演者らに加え大辻統・近畿運輸局交通政策部長をパネリストに迎え、ディスカッションが開かれ、「持続可能な地域公共交通を考える」をテーマに議論が交わされた。