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令和3年度 第4回 神戸波止場町サロン
新技術とAIで、CO2削減・事故防止を目指す

神戸市運輸監理部(石原彰監理部長)は2月7日、新型コロナウイルス感染拡大の防止として、令和3年度第4回神戸波止場町サロンをWEBで開催した。今回は「船が挑む2つの改革〜ゼロエミッションと自動運航〜」の取り組みがテーマで、資料に沿って石原彰監理部長と担当職員より説明があった。

船のグリーン化(ゼロエミッション)については、概略として、現在世界のGDPの成長と海上荷動量は相関関係にあり、世界の海上荷動量は拡大傾向(毎年平均約4%の伸び率)。また、外航海運を担う大型船舶は、重油を燃料とし、1隻あたり年間数万トンのCO2を排出している。

このような背景から、ゼロエミッションの取り組みが行われている。具体的な活動として、
神戸運輸監理部の担当職員が選んだトピックス、風力推進船の現状と展望、水素運搬船及び水素燃料電池船の開発、アンモニア燃料船について説明があった。

風力推進船の現状と展望については、近年、環境意識の向上により風力推進装置の開発が世界的に活発化している。また、NSユナイテッド海運と名村造船所は、風力補助推進装置を開発、これにより、船上排ガス全てゼロも可能となる。2024年頃から船舶側の技術が確立され、実践投入が開始予定。さらに2050年時点で、国際海運全体の約2%が導入する想定だ。

水素運搬船及び水素燃料電池船の開発については、川崎重工業による世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」の試験を実施。液化水素の本格的な輸送は2030年頃に開始予定だ。しかし、水素は低炭素化実現の有効な手段である一方、コスト面などの課題解決に注力する必要があるとした。

アンモニア燃料船については、アンモニア燃料の特徴として、航行時に排出するCO2排出量がゼロになるなど、脱炭素燃料のポテンシャルは高い。しかし、燃えにくい、NOx・N2Oの発生など課題も様々ある。高度な燃焼制御技術など、引き続き技術開発をしていくことが必要だ。

船のデジタル化(自動運航船)については、「海事生産性革命(i-Shipping)」の一環として、近年注目を集める自動運航船について、海難事故の減少、船員労働環境の改善、海事産業の国際競争力強化を目的として、2025年までの実用化を目指すものである。具体的な活動としては、こちらも担当職員が選んだトピックスとして、自動運航船の現状と未来、航空機と船舶の自動運航の比較について説明があった。

自動運航船と現状と未来については、海難の要因として、例年、人為的要因が半数以上で、令和2年度においても約73%を占める。特に、操船不適切と見張り不十分が多く、AIにより船員をサポートできれば負担軽減及びヒューマンエラーの削減が可能だ。2025年までには、主にAIによる判断領域を広げ、遠隔操作も可能にしていく。

航空機と船舶の自動運航の比較について、機体性能として航空機は、高度計や気圧計、機上レーダーなど測定機器が豊富でレーダーに映らない障害物が少なく、また操作に対する反応も素早い。船舶は、周辺把握用のセンサー類が少なく、GPSなどは誤差や通信不良などが課題だ。

周辺環境について航空機は、空港周辺は高度に管制がコントロールしているため、周辺の安全や進路など事前に確保されるなど、離着陸の操作にリソースを割くことが可能だ。一方船舶は、港内が管制されているわけでなく、離着桟時も他船が行きかっているため、自船の設備のみで操船、また見張りにもリソース割き操船しなければならない。

今後は、コストや法整備など普及のための課題に取り組む必要がある。