自動車ニュース
第52回物流セミナー
「過剰サービスに見合う適正料金の収受が必要」藤井氏

兵庫県トラック協会(原岡謙一会長)は10月31日、ANAクラウンプラザホテル神戸で第52回物流セミナーを全ト協共催で開催した。講師には、近畿運輸局自動車交通部の貨物課長を務める金澤重之氏、京都大学大学院工学研究科で教授を務める藤井聡氏を招いて行われた。

開会で原岡会長は「近年、少子高齢化によるドライバー不足の一途をたどっております。事態を深刻化しているのが、トラックドライバーの労働時間が他の産業と比べて長時間、また低賃金であり、3K職場というイメージが定着。そのため、トラックドライバーの労働環境、労働状況を改善し、若者や女性にも魅力があり、働き甲斐のある職場に改善していくことが必要です。

今後も荷主様へのご説明を行い、理解ならびに協力を得るように努力してまいりますので、各荷主様におかれましては、ドライバーの労働環境の改善に必要な待ち時間の短縮、適正な運賃料金の収受などによりトラック業界の働き方改革の現実に向け、格別のご理解とご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。」と挨拶した。

続けて、山名生也・兵庫陸運部長、木下麻子・兵庫労働局労働基準部長、角田正文・兵庫県警察本部交通部長より来賓のあいさつがあった。

講演は、金澤氏が「トラック事業に関する働き方改革の取り組みについて」と題して、資料に沿って説明があった。

燃料価格上昇がもたらすトラック事業者への影響については、令和元年度の決算で、燃料費はトラック事業のコストの13.4%を占めている。また、働き方改革の対応を迫られている中、燃料価格の高騰が追い打ちとなり、深刻な経営難となっているとした。

さらに、アンケート結果の状況(トラック事業者に対する運賃交渉関係)では、「標準的な運賃」、燃料サーチャージにおける届出・交渉状況と収受状況についてのトラック事業者回答をクロス集計して分析したところ「交渉していない」よりも「交渉した」場合の方が、その後の収受に一定の成果が上がっている状況だと説明した。

京都大学大学院工学研究科で教授を務める藤井聡氏は「運送業界の現状と課題」と題して講演した。

構造的な問題として、最上流にある諸悪の根源は「業者参入規制緩和」。1990年からの規制緩和で業者が増え、下層構造化が進み、ダンピングが助長され、料金収受における適正な慣習形成が阻害、またダンピング・低賃金化が進む悪循環が駆動・加速されている。さらに、デフレで荷主からの価格低下の圧力が存在していたことが、この緩和をさらに致命傷化させたとした。この問題を解決させるためには、非コンプライアンス企業の取り締まり・参入チェック、加えて、多重構造化対策が不可欠だとした。

さらに、2000年以降の「荷主・消費者の要求サービスレベルの高度化」は、「需要増により、価格増」ももたらしている反面、「必要経費の未収受により、価格低下・低賃金化」の主要原因となっている。この問題を解決させるためには、要求される過剰サービスに見合う適正料金の収受が必要と述べた。