自動車ニュース
年頭所感― 神戸運輸監理部 兵庫陸運部長 山名 生也 (2/2)
事業用自動車の安全・安心の確保について

誰もが安全で安心して利用できる交通環境を確保することが、交通行政の最大の使命です。中でも、事業用自動車にかかる事故の削減につきましては、平成21年に「事業用自動車総合安全プラン2009」を策定して以降、関係者と一丸となって取り組んでまいりましたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響、大規模水災害・雪害の激甚化・頻発化、高齢社会の進展、ICT・先進安全技術の急速な発展等、当該プランの策定時から大きな状況の変化がありましたことから、事業用自動車が置かれている社会環境、事故状況、重点的に検討する事項等について議論を行い、新たな「事業用自動車総合安全プラン2025」へと移行しました。

本プランでは、重傷者数、各業態の特徴的な事故に対する削減目標を新たに設定し、飲酒運転の根絶、健康起因事故等への対策、先進技術の開発・普及を踏まえた対策、超高齢社会におけるユニバーサルサービス連携強化を踏まえた事故防止対策等を盛り込み、世界に誇る安全な輸送サービスの提供の実現を目指しており、近畿運輸局管内においては安全プラン2025に基づき、近畿運輸局管内の事業用自動車の、交通削減目標を設定するとともに、年度毎に近畿地域事業用自動車安全対策会議で目標設定に向け、官民を挙げ協議し、各種施策を策定し、世界一安全な輸送サービスを実現するため、ソフト・ハード面から総力を挙げて事故の削減に取り組んでいるところでございます。

自動車運送事業者に対する監査、指導につきましては、輸送の安全確保に支障を及ぼすおそれのある重要な法令違反の疑いがある事業者及び悪質違反、重大事故を引き起こした事業者に対し、優先的に立ち入り監査を実施するなど監査体制の強化を図り、指導や厳正な処分を行ってまいります。
また、関係省庁や関係機関との連携を強化しつつ、街頭監査の実施やより効果的な監査を実施するとともに、運送事業の安全・安心の確保のため、各事業者における運輸安全マネジメントによる安全管理体制の確立など更なる推進に努めてまいります。

自動車の安全性確保と環境保全、ユーザーの利便性向上について

我が国の自動車保有台数は、令和4年3月末現在で8,200万台を超え、兵庫県においては約300万台を超えており、経済活動、日常生活においてなくてならない存在となっています。

交通事故の発生状況は、令和3年の交通事故死者数が2,636名と統計を取り始めた昭和23年からの統計で、5年連続で最小を更新しました。一方、ブレーキ・アクセルペダルの踏み間違い事故が2018年から2020年の3年間で1万件近く発生しており、死亡重傷事故は高齢者によるものが多いが、死傷事故では車両相互事故において若い運転者でも多く発生していることがわかっています。

これらに対して、先進安全装置を搭載した「安全運転サポート車」(サポカー)の普及促進、自動車アセスメントのPR、事業用自動車を対象とした事故防止対策支援推進事業への取組みを深化させてまいります。

近年、自動車を取り巻く社会の変化や技術の進歩は更にめまぐるしく、100年に一度の大変革とも言われ、この変革を象徴するキーワードがCASEです。「C(Connected)」自動車のIoT、「A(Autonomous)」自動運転、「S(Shared & Services)」シェアリング、「E(Electric)」電動化です。自動車がインターネットでつながり、「保有する」ものから「共有する」ものとなるなど、クルマの使い方が大きく変化しています。

この目まぐるしく発展を遂げる自動車は、その機能維持が重要であるため、サポカー等が搭載する「電子制御装置」や自動運転レベル3以上の自動車に搭載される「自動運行装置」を整備するための設備や技術などの要件を整理し、令和2年4月から「自動車特定整備制度」をスタートさせました。これらの技術に対応する自動車整備工場の環境整備を推進するとともに自動車整備士の技術力向上に各団体と協力しながら支援してまいります。

一方で、自動車整備業界の大きな課題として、自動車整備士の不足があります。100年に一度の大変革期を迎え、新たなニーズに応えつつ、整備士不足の課題を解決していくためには、人材確保とりわけ、若者をいかに惹きつけるかが極めて重要となっております。

これらの課題に対し各関係団体とともに、「兵庫県自動車整備人材確保育成連絡会」を開催し、これまでに県内の高等学校を訪問し校長先生をはじめ進路指導の先生方に自動車整備士の必要性や業界の魅力を伝えてまいりました。また、新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら「自動車整備士職業紹介フェアin神戸」の開催を計画しております。人材確保や女性の活躍推進について今後もあらゆる機会を捉え取組んでまいります。

自動車の登録業務について、デジタル庁発足以来進むデジタル化促進の中、1月より自動車検査証がICタグ付きの電子車検証となり、券面が小さくなるとともに券面の記載も省略され、具体的な内容はICタグに記録され、カードリーダーでの読み取り又は券面のセキュリティコードを使用し専用アプリで読み取ることとなります。これにより、従来から手続きの負担軽減及び事務の効率化等を図るためのワンストップサービス(OSS)に加え、「記録事務委託制度」により券面の変更を伴わない場合は、出頭不要となります。今後におきましても関係機関・団体等と連帯を密にして利用促進に努めてまいります。

おわりに

以上、新しい年を迎え、所信を申し上げましたが、関係団体、関係行政機関の皆様方には、当陸運部の業務になお一層のご支援、ご協力をお願い申し上げますとともに、今年一年の皆様方のご健勝とご多幸を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。