自動車ニュース
年頭所感― 公益社団法人 兵庫県バス協会 会長 長尾 真
国土交通省をはじめ、関係省庁、関連団体、会員の皆様には、日頃より当協会の活動に多大なるご支援、ご尽力を頂き、心より御礼申し上げます。

2023年の新春を迎えるにあたり、謹んでお慶び申し上げます。
昨年も新型コロナウィルスの影響を受けた一年と言わざるを得ません。緊急事態宣言こそ発出されませんでしたが、兵庫県下では、まん延防止等重点措置実施期間が3月21日まで適用されました。その後、夏から秋にかけて感染者数の落ち着きが見られたものの、この冬には第8波が到来したと言われております。日々メディアで発表される内容を気にしつつ、引き続き緊張感を持ち続けなければならない状況となっております。

当協会の昨年の取り組みとしては、会費の一部免除のほか、国会議員や自治体などにコロナ禍における業界の厳しい経営状況をお伝えし、継続的な支援にむけての要請活動を行いました。今年も会員事業者の皆様に対して協会が取り組むべき施策を着実に行ってまいります。

一方で、バス業界においては、大きな事故や事件が発生しました。静岡県での貸切バス横転事故や神奈川県で路線バスが民家に激突した事故などは、まだ記憶に新しいと思います。これは少し異なりますが、通園バスでの車内置き去り事件など、バスに対する悪い印象を持たれた年でもありました。事故でお亡くなりになられた方およびご親族の皆様には深く哀悼の意を申し上げるとともに、今も怪我の回復途上の方には1日も早い回復をお祈り申し上げます。再発防止のための原因追及が待たれますが、過去の反省を踏まえ業界全体で安全確保に向けた取り組みを進めている中、そして要請活動の最中での事故であり、誠に遺憾であります。

さて、第8波の心配もありますが、世間一般には行動制限を行わないことが前提となり、屋外でのマスク着用も緩和されています。公共交通利用による感染が立証されたものはありませんし、基本的な対策を行うことで、感染拡大は回避できると確信しております。我々は引き続き、換気・車内消毒を徹底し、お客様に対しては、車内でのマスク着用と会話の配慮をお願いすることで、安心してご乗車いただけるように案内して参りたいと思います。

県民割から拡大した全国旅行支援による旅行需要の喚起策もあり、観光地では多くの観光客が訪れていることがメディアで取り上げられています。貸切バスでは修学旅行等の学生団体利用など、徐々にではありますが、動きも出ております。インバウンドの受入もほぼ解除となり、円安も影響して、外国人観光客の姿も増えてまいりました。我々はこの契機を集客及び増収につなげる必要があります。JRグループの施策であるデスティネーションキャンペーンは、本年は兵庫県が対象となっております。国内外ともにさらなる観光客の受入体制の整備に向けて尽力してまいります。

また、関西では「2025年大阪・関西万博」に向け、ようやく本格的な動きが出始めました。輸送部門ではシャトルバスの運行に向けた基本方針も定まり、より具体的な内容の策定に向けて進んでおります。また、万博を契機に人・モノ・投資を促進すべく、兵庫県域での大阪湾ベイエリアの将来像や事業展開の方向性を示す「兵庫県域の大阪湾ベイエリア活性化基本方針」を策定するために、大阪湾ベイエリア活性化推進協議会が設置されました。県、関係市町、民間企業等で構成されており、当協会も参画しております。

さらに、神戸三宮エリアの再開発にあわせた、新バスターミナル(2027年度完成予定)も今年から工事が着手される予定であり、2030年度の神戸空港国際化も計画されております。ますます兵庫・神戸の役割が大きくなるものと確信しております。これからも業界の発展に寄与させるべく取り組みを強化させていかねばなりません。

長期的な視点では、SDGsや脱炭素・カーボンニュートラルの対応のなかで、FCV(燃料電池バス)、EV(電気バス)の導入そして拡充も進めていかねばなりません。また、自家用車から公共交通への転換は、我々の業界がカーボンオフに向けて本来取り組むべき行動です。兵庫県においては、播磨エリアの沿岸地域は全国屈指の工業地帯でもあり、多くの従業員が従事されています。従業員輸送のグリーン化およびGX推進に向け、国や沿線自治体、企業に働きかけてまいります。

明るい話題がある中ですが、直近の大きな懸念は業界全体での人材不足です。他事業も同様とは聞き及びますが、我々バス業界は、コロナ禍による極端な利用者の減少を受け、事業継続のために致し方なく事業を縮小せざるを得なかった事情もあり、結果として、従事する者が大幅に減ったところが大半だと思われます。

運転者の人員不足は、今後、大きな社会問題になると思われます。労働集約型産業という性質を踏まえつつ、早期の抜本的な見直しが必要です。法令遵守は前提としながら、労働者の待遇改善、多様な働き方への対応などに対応しなければなりません。これら諸課題に対応するための方策の1つとして、運賃改定の動きが各地で既に出ております。他業種の状況も睨みつつ、利用者のご理解を得られる施策も並行しながら、着実に進めていく必要があります。

最後に、今年は卯年です。数年間のコロナ禍による閉塞感から大きく「飛躍」し、私たちの生活が大きく「向上」する年になるよう、未来を見据えながら業界の発展にご尽力いただきますようお願い申し上げます。皆様の事業の繁栄、そして読者の皆様とご家族のご健康とご多幸を祈念して、年頭の挨拶といたします。