自動車ニュース
富山LRT 「人とにぎわいを取り戻す」―市内電車環状線
 富山市の都心部を環状運転する新型LRT、セントラム(CENTRAM)が昨年12月に運行を開始した。これまで、富山市が行ってきた国内初の本格的LRT(次世代型路面電車)となる富山ライトレールの開業、JR高山本線の増発実験に続く取り組みとなる。中心市街地が空洞化し、都市機能が拡散する中で、活気を無くした商店街を再び活性化させることなどを狙い環状線が誕生したのだという。

 富山市民のうちの約3割の人が自由に使用できる車を持たず、その大半が高齢者。今後の人口減少、超高齢化により、更に車を使用できない人の数が増加すると富山市は見ている。こういった状況でどのような方法で中心市街地に人とにぎわいを取り戻すかが市の課題となっていた。

 富山市の谷口博司路面電車推進室長は「交通弱者の方々を含め、あらゆる人が生活しやすく、車だけに頼らない歩いて暮らせるまちづくりを進めたい。収支採算面で赤字になるという意見があるが、公共交通機関は福祉と同じ。採算面だけでは測れない問題だ。LRTの型が従来のものとは違うという意見もあるが、戦後、富山大空襲で焼け野原となった富山の街を見事に復興させた諸先輩の想いを考えると、形に捕らわれず、富山から新しいモデルを作り街を再び生き返らせることが重要だ」と話す。

 高齢者が増え、車を使えない人が増えるという状況に行政がどう向き合うか。車に頼らずとも生活できるコンパクトなまちづくりを掲げる富山市の挑戦はこれからも続く。


○富山市
 くすりのまちとして全国に名が知られ、北には富山湾、東に雄大な北アルプスと立山連峰を望む北陸地方の中核都市。平成17年4月に7市町村が合併し、平成25年度には北陸新幹線が開業する。人口は42万人。
 自動車への依存、高い持ち家志向が影響し、戦後一貫して郊外開発が進み、市街地が拡散するという問題を抱え、県庁所在地の中で最も市街地の人口密度(41.2人/ha)が低い都市となっている。