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年頭所感― 公益社団法人 兵庫県バス協会 会長 長尾 真 |
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「過去を振り返ってヒントを望みを捨てずチャレンジで」 年頭にあたり、謹んでお慶び申し上げます。 昨年は新型コロナウイルスの発生および感染拡大により、全世界的に「移動しない」「接触しない」ことが推奨されるという今までになかった状況となりました。我々の事業はまさに「移動する」ことを生業としており、直接的に影響を受けた事業であります。事業の根幹を揺るがされた1年であり、この影響まだ当分は続くものと予想されます。 さて、コロナ禍によるバス業界への影響については、3月の学校休校措置から始まり、4月の緊急事態宣言発令で大幅に輸送人員が下落しました。解除後も遠隔授業やテレワークの浸透、イベントの中止等により輸送人員が回復することはなく、全体として乗合バスでは概ね対前年7~8割、高速バスや貸切バスでは3〜5割といった状況です。各事業者ともに軒並み赤字に転落し、過去最悪の収支状況に及んでいるところが大半であろうかと思います。飲食やレジャー業なども同様で、何らかの支援なしでは経営が成り立たない状況が全国的に拡大し、予断は許せない状況です。政府主導のGoToキャンペーンについては、一定の効果はあったと思いますが、あくまでも一時的なものであり、抜本的な経営改善策とは言えないというのが現実ではないかと思います。業界としてインバウント需要の獲得や人材不足の解消等、未来に向けた投資を推進してきただけに、運送収入の減少にかかる影響は計り知れません。大幅な方針転換を行わざるを得ない状況となりました。 協会としましても、行政からの生活交通の運行維持要請に応える事業者に対する支援の陳情、会費の一部免除、利用者に対する告知として「バス密なし!3つの約束キャンペーン」の実施など、できる限りの対応を行っており、本年も同様に継続してまいる所存です。 そのなかで、新しい生活様式に変わるなか、我々も今までとは異なる新しいスタイルを模索し提案することが求められます。今一度、仕事を見直す機会でもあり、思い切った改革も必要となるでしょう。MaaSやDXなどの新しい考え方による移動のあり方を考えていく必要があります。 乗合バスでは昨年11月に施行され地域公共交通活性化再生法の活用があります。赤字解消のための共同経営に向けた取り組みが独占禁止法の適用外になるなど、法的な面での環境が整いました。競争から協調の流れにより、利便性の向上と経営の効率化を両建てで実施することで、事業経営と地域交通の維持を図る取り組みは各地で拡大すると思われます。 貸切バスでは地元を楽しむマイクロツーリズムの拡大など、今までの団体輸送とは異なる事業機会の創出が必要であり、観光地が広範囲にわたる兵庫県においては入れ込み客を増やせるチャンスもあると考えております。また感染拡大を抑制するための企業輸送などのニーズも増えることが予想されます。 大きな影響を受けた一方で裏を返せばコロナ禍により「移動することが経済を活性化する」ということが明らかになったとともに、我々の使命は非常に大きいものだと確信いたしました。 今後、感染予防策の拡充やワクチンの提供等により自粛が緩和され、レジャーやインバウンドなどの需要は再び復活すると考えております。特に関西では大阪万博の開催や、神戸三宮エリアの再開発などのプロジェクトも目前に迫っております。これらの機会を確実に捉えて増収につなげることが業界の復活につながると考えます。 しかし、忘れてはならないことは安全の確保です。今の経営状況でひとたび大きな事故を惹起しますと、信用の低下はおろか会社存続の危機に立たされることは容易に考えられます。感染防止の取り組みと同様、コツコツ進めるべきところは着実に、変えるべきところは大胆に。という着想で取り組んでまいります。 皆様方におかれましては、年始はご自宅でゆっくりと過ごされ、初詣も近場で済まされるなど、いつもと違った新年を迎えられたのではないかと思っております。昨年の今ごろは、オリンピックの開催を控え、盛り上がりを見せつつありましたが、まさに青天の霹靂でした。このような厳しい状況下で新年のご挨拶を申し上げることは憚られますが、昨年を振り返ることが、この難局を乗り越えるための皆様のヒントになればという思いから、お伝え申し上げた所存です。今年は耐え忍ぶ毎日になるかと思いますが、コロナワクチンの認可も進むと思われますので、希望を捨てず果敢にチャレンジする精神で取り組んでまいりましょう。 皆様の健康とご多幸を祈念し、年頭のご挨拶といたします。 |